厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会は8月1日、2022年度の地域別の最低賃金の目安について、全国平均で時給を31円引き上げて961円とすることを決めました。

時給で示すようになった2002年度以降最大の引き上げ額ですが、北海道の上げ幅も最大の30円で、このまま確定すれば919円となります。

今年は昨今の物価高を配慮して大幅引き上げを主張した労働者側と、原材料価格の高騰などの影響を配慮して引き上げ自体には同意するものの大幅な引き上げには難色を示す経営者側のぶつかり合いとなりましたが、最終的には大幅な引き上げで決着しました。

これはまだ確定事項ではなく、今後は北海道は北海道労働局長の諮問機関である北海道地方最低賃金審議会での議論を経て最終決定となります。

一応919円で確定すると仮定して話を進めますと、企業にはどのような影響があるでしょうか?

まず1つは人件費の増加です。

引き上げ後の最低賃金に満たない時給又は月給に設定しているパートタイマーや正社員がいれば、最低賃金を下回らないように給与を改定する必要があります。

もしも現在時給を最低賃金である889円に設定しているパートタイマーが10人いて、全員1ヶ月に80時間働いているとすると

30円(最低賃金引き上げ額)×80時間×10人=24,000円

月の給与が増えることになります。年換算で288,000円です。

中小企業にとっては結構なインパクトではないでしょうか?

もしも現在の最低賃金で人件費を支払ってなんとかギリギリお金が回っているということであれば、人件費が増えることによってお金が回らなくなるおそれがあります。

その分をきちんと価格転嫁できるのかどうか?

特に下請けかつ1社に依存しているような会社がそれを元請け業者に言えるのか?

言っても拒否されたらどうするのか?

そういったことを考える必要があります。

もう1つの影響が人材確保の問題です。

特にパートタイマーが多く、かつ配偶者の扶養に入るために年収130万以下になるような働き方をしている人が多い会社は大いに影響があります。

最低賃金が引き上げられても、扶養に入れるいわゆる「130万の壁」が変わらなければ、労働時間を少なくして対応する必要があります。

そして既存のパートタイマーの労働時間が少なくなれば、その分を別の人でカバーする必要があります。

場合によっては新たに人を採用する必要があるかと思いますが、同業他社も同じような状況でしょうから人の取り合いということになります。

場合によっては求人を出しても人が採用できないということにもなりかねません。

もしも新たに人を採用できなければ、既存のパートタイマーが少ない人員で働くことになるため負担が増えます。

「こんなに仕事がキツくなるなら辞めて他所に行きます」ということになってしまえば、さらに残った人の負担は増え、さらに辞める人が出て・・・と悪循環に陥る可能性もあります。

新しい最低賃金は10月1日からの適用となります。

あと2ヶ月弱しかありません。

大至急対応するようにしましょう。