厚生労働省が発表した2021年度の労災補償状況によると、仕事による強いストレスが原因のうつ病など精神障害の労災認定は629件と前年度から21件増えて、3年連続で過去最多を更新したそうです。
原因は「上司などからのパワハラ」が125件で最も多く、以下、「仕事内容・量の変化」が71件、「事故・災害の体験・目撃」が66件と続いています。
年代別で見ると40代が最多の200件となっています。
なお、請求件数は全国で3099件で、こちらも過去最高となっています。
このうち支給が決定したのが801件ということですから、労災の申請をして支給決定となる割合は約25%ということになります。
また、801件中629件が精神障害によるものということで、「労災」と聞くと事故などによる怪我などをイメージするかもしれませんが、実は8割近くは精神障害によるものだということをこの機会に認識していただければと思います。
それにしても前回「侮辱賞状によるパワハラの大きなツケ」でも取り上げた通り、パワハラによる強いストレスで自殺→労災認定ということで大々的に報じられる残念な事例が後を絶たないです。
請求件数3099件のうちパワハラに関連するものがどれぐらいあるのかは分かりませんが、仮にザックリ8割で計算して約2500件だったとしても、これはあくまでも労災の申請がされた件数であり、亡くなったりうつ病になったりはしていないので労災申請はしていないけれど明らかにパワハラの事実があるという事例はこの何倍もあるのではないかと推察されます。
思えば先日まで放送されていた『正直不動産』にもシソンヌの長谷川さん演じる大河課長というまぁまぁパワハラ発言をする上司がいましたが、お仕事系ドラマではこの手のパワハラ上司や、上司にバレないように巧妙に主人公をいじめる同僚など割りとパワハラをするキャラがいたりして、フィクションの世界でも「職場にパワハラをする人がいるのは当たり前」と認識されているのかもしれませんね。
さて、厚生労働省が発表した別の資料によると、退職者の離職理由として上位に挙げられるのが「職場の人間関係が好ましくない」です。
どう人間関係が好ましくないのか?というのはぜひ深掘りしたい興味深いところではあるのですが、パワハラが横行し人間関係がギクシャクしている職場に長く勤めようと思わないというのは当然の感覚です。
仮に経営者はパワハラをしなかったとしても職場にパワハラが蔓延していれば優秀な人材は辞めていきます。
それで「うちには優秀な人材がいない」と嘆いても「そりゃそうですよね」という話です。
ミスをした部下などに「なにやってんだ、バカ!」と怒鳴れば、その瞬間は多少スッキリするかもしれませんが、その代償は大きいのです。