前回「パワハラ防止法の施行で起こりうることとは?」というテーマで、今年4月から中小企業にも適用されるパワハラ防止法により、今後適切な指導ができなくなる会社が増えるのではないかという話をしました。

ハラスメント問題は厄介なもので、行為者と行為を受けた側で捉え方が異なるということはよくあります。

例えば、男性の上司が部下の女性を食事に誘ったところ、誘われた女性は「セクハラで迷惑だ」と思っているのに、誘った側の上司の方は「部下は自分に気があったからセクハラではない」と思っているといったようなケースです。

ただ、セクハラの場合、重視されるのは「受けた側がどう感じたか」になりますので、不快に思ったり職務の遂行に支障を来たすようであればセクハラだ、ということになります。

パワハラの場合も、例えば上司は適切な指導と思っていても、指導を受けた部下の側はパワハラだと感じるというように行為者と行為を受けた側での捉え方が異なるケースがあります。

例えば遅刻してきた部下に対して「遅刻しちゃダメじゃないか、次から気をつけろよ」と上司が注意をしたとします。

別に怒鳴るわけでもなく、みんなの前で吊るし上げるわけでもなく、スマートに伝えたわけです。

でもこの部下は「怒られて自分はとても傷ついた。これはパワハラだ!」と思ったとします。

さて、これはパワハラに該当するでしょうか?

結論から言うとこれはパワハラには該当しません。

なぜならば上司の注意は業務上必要な範囲内の適切な指導だからです。

遅刻をするという行為は労使間で約束した労働契約を守っていない状態なわけですから、それを是正するために指導を行うことは必要な行為であり、問題ありません。

ただ、その際に「みんなの前で罵倒する」とか「人格否定をする」などの「人間としての尊厳を侵害する行為」がプラスされてしまうとパワハラになってしまいます。

ただ近年は「ハラスメント・ハラスメント(略してハラ・ハラ)」が問題になっています。

これは「自分が嫌だ、不快だと思った他者の行為や言動に対して『ハラスメントだ!』と過剰に主張する嫌がらせ行為」と定義されます。

つまり客観的に見て適切な指導の範囲だったとしても「それに対して自分は不快に感じた、だからハラスメントだ!」と主張するという困った行為となります。

前回の話にも通じるのですが、このような「ハラ・ハラを訴える社員」が増えてきたことと、今回のパワハラ防止法の中小企業への適用スタートというのが重なって、「もう何か問題行動を起こす社員がいても誰も何も言えない」となってしまうのを危惧しています。

前回はそこで「選択理論心理学を活用しましょう」という話をしましたが、特にオススメなのが、「ビジネス選択理論検定」の勉強を通じて、適切な指導の仕方を学ぶことです。

ビジネス選択理論とはその名の通り、選択理論心理学をビジネスの現場で使えるようにアレンジしたもので、「脅したり罰したりすることで人を動かそうという外的コントロールは人間関係を破壊してしまうので職場からなくしましょう。かと言って問題行動を放置してはいけないので、選択理論に基づいた適切な指導を行うことで良好な人間関係を維持しつつ、甘えのない自立した社員が十分に力を発揮できる職場を作りましょう」という趣旨で編み出されたものとなります。

勉強を通じて体系立てて学ぶことで、何が適切な指導なのか、何がパワハラになってしまうのかというラインが少しずつ明確になり、強い組織を作ることができます。

検定試験のテキストはアマゾンで購入できますので、ぜひとも学んでみてください。