リクルートワークス研究所が大企業に勤める新入社員らを対象にした就労状況定量調査によると、「自分が働く会社がホワイトすぎて離職する」という若者が増えているそうです。

これ、「ブラックすぎて」の間違いではありません。「ホワイトすぎて」です。

どういうことなんでしょう?

働いている会社が長時間労働でノルマもきつく、上司からのパワハラは日常茶飯事というブラック企業なのであれば「さっさと辞める」という選択も理解できます。

でもそうではなく「ホワイト企業なのにさっさと辞める」若者が増えているのはなぜなのでしょうか?

その理由は「不安感」だそうです。

新入社員の約7割が「不安だ」と回答しているそうですが、それは「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」というたぐいの不安感なんだそうです。

長時間労働による過労死やパワハラによる自殺などが社会問題となり、法律が整備されてきました。

これにより労働時間は大幅に減りましたし、新入社員時期に上司や先輩から叱られたことが一度もなかった人が約25%にものぼるそうです。

私が新入社員だった20年前は、長時間働いて仕事を覚えるのは当たり前でしたし、やはり叱られて仕事を覚えたものです。

そんな経験をした身とすれば、ホワイトな職場のどこに不満があるのか、という感じなのですが、そこには会社の社員への関わり方の変化が挙げられるようです。

私が新入社員だった頃は、OJTで結構ガッツリ教えてもらいましたし、仕事終わりに飲みに行ってコミュニケーションを取るというのも当たり前でした。

しかし、今では「会社がしっかり育てる」というよりは「社員の側が会社を利用して主体的に育つ」ことを推奨していますし、コロナはさておき飲み会によるいわゆる飲みニケーションの場というのも激減してしまいました。

そういうコミュニケーションの場が少なく、かつ(昔に比べて)短い労働時間の中では職場の人間関係が希薄になりがちで、そこで下手に叱ったりすると「パワハラだ!」という騒ぎになりかねないので、本当であれば叱る必要がある場面でも叱れずにいるという構図が想像できます。

そういうことが重なって、きちんと法令を遵守している「ホワイト企業」にも関わらず、そこで働く新入社員が「こんなぬるい職場で働いていて、自分、大丈夫か?」と不安に思い辞めてしまう・・・。

う~ん、なんなんでしょうね、これ。

ある意味贅沢な悩みと言えるのですが、ここから読み解けることは、やはり「若い時の苦労は買ってでもせよ」というのはその通りだということです。

ここでの「苦労」というのは別に長時間労働だったり、怒鳴られることだったりという意味ではありませんが、「自分は成長できている」と実感できるようなチャレンジの機会を会社が作っていくことは非常に大事です。

私は社会保険労務士としてクライアントの職場環境整備のお手伝いもしていますが、やはり中小企業でも同じような問題が生じつつあると感じています。

残業をなくし、有給休暇も自由に取得でき、パワハラと無縁の素晴らしい職場を目指しつつ、成長のための機会を作ってあげる。

それが今後、会社に求められるものとなっていくのではないでしょうか。