首都圏地盤のスーパー、オーケーの花王製品の取り扱いがニュースとなっています。

今月3日、花王は原材料高を理由に3月をめどに洗濯洗剤や柔軟剤、ベビー用紙おむつの一部を値上げする計画を公表しました。

それを受け、低価格が売りであるオーケーは花王から大幅な仕入れ価格引き上げの申し入れがあったとして、値上げ製品で売れ行きが悪く従来品で代替できる145品目について1月31日から販売を中止しました。

しかしその後、2月16日に、顧客の要望に応じて取り扱いの再開を検討すると発表しました。

このニュース、今の日本のメーカーと小売業者と消費者の関係を如実に表していて非常に興味深いと感じました。

ここ数年、原材料の値上がりが止まりません。

メーカーとしては販売価格を据え置いてしまうと原価ばかりが増えてしまい利益は減る一方です。

当然原価が増えるのであればそれに対応して販売価格も上げたいというのが心情です。

一方小売業者としては、ごく一部の富裕層向けの高級路線のお店を除けば、消費者が求めているのは1円でも安い商品ということで、オーケーのように低価格を売りにしています。

ということは仕入れ値は1円でも安いほうがいいわけです。

たまに経済番組などでバイヤーの熾烈な交渉現場を取り上げることがありますが、電卓を叩き「この値段で」と提示しメーカーの担当者が渋々「分かりました」と承諾するなんていう場面があります。

メーカーがどんなに大きな会社でも自分で直接販売するのでなければ、小売業者が扱ってくれなければ商品は売れません。

以前の「カントリーマアムの2040年問題」でも取り上げましたが、「メーカー<小売業者」という力関係が成り立っているのです。

さて、それでは我々消費者はどうなのでしょうか?

確かに「なにがなんでも1円でも安い商品を!」ということで毎日チラシをチェックして、最安値で帰るように何軒もスーパーをはしごするという人も中にはいるでしょう。

ただ多くの人は「安いに越したことはないけど、かと言って安かろう悪かろうは困る。品質がしっかりしていればそれなりの価格でも買う」というスタンスなのではないでしょうか?

また、今回は特に大手・花王の製品ということで、「大手の商品なら安心」とか「いつも使っているブランドが無くなるのは困る」といった行動経済学的要素も働いたのではないかと思われます。

オーケーは今回の報道に対して

「値上げに反対しているわけではない。売る側が一方的に悪者に扱われて困惑している」とコメントしました。

実際、「うちのお客さんは低価格のものを求めているんだから、それに合わない商品は扱わないようにしよう」という顧客ニーズに沿った判断だったのでしょう。

それが、案外お客さんは「高くてもいいからいつも使っている商品を置いて欲しい」と思っていたということで、「基本的に安さを求めている」けど「いつも使っているブランドが無くなるのは困る」という「予想通りに不合理」な顧客心理を予想できなかったために、今回の騒動に発展したのでしょう。

「失われた30年」を経て、いまだに安さばかりを求めるということでは賃金も増えませんし、国力も上がりません。

もうそろそろ「安いのはいいこと」からの脱却を図りませんか?