リンダ・グラットンとアンドリュー・スコットの共著による『ライフ・シフト』が出版されたのは今から5年前の2016年となりますが、この本の登場により「人生100年時代」という言葉が一気にメジャーなものになりました。

これはかなりのインパクトと言えるでしょう。

特に我が国は世界でも類を見ない長寿国家であり、80歳、90歳まで生きるのは当たり前という感覚がありましたが、この「人生100年時代」という言葉により、「そうだよな、もう100歳まで生きるのは当たり前だよな」というように概念が書き換わったように感じます。

もちろん、2016年時点で「いま生まれた赤ちゃんが100歳まで生きる可能性が高い」という話であり、我々がすぐに100歳まで当たり前に生きられるわけではないのですが、それでも人生が長くなる傾向にあるのは間違いのないことです。

「長生きできて人生の時間が増えることで色々とやれることが増えるぞ!」と前向きに捉えることもできますが、その一方で「長生きすることによるリスク」というものも気になります。

まずはなんといっても健康面。

長生きできるようになっても人生の終盤は身体のあちこちにガタが来て、病院通いばかりだったり寝たきりになったりというようなことは誰も望んでいないことでしょう。

いかに「健康で長生きできるか」というのは「人生100年時代」の大きなテーマだと言えます。

そしてもう一つはお金の問題です。

一昔前であれば60歳で定年退職した後は手厚い年金で80歳ぐらいまでの余生を悠々自適に過ごすということができました。

しかし、我々世代はそもそももらえる年金の額が上の世代に比べて少ないですし、60歳で定年退職すると仮に90歳ぐらいまで生きられるとすると余生というものが30年もあることになります。

その間、年金だけで生活するのは難しいでしょうから、もっと長く働く必要があります。

そのことを踏まえて、今年発売された『ライフ・シフト2』を読むと、働く側としても会社の側としても働き方を変化させていく必要があると感じます。

まずは寿命が伸びている人間に対して、会社の寿命は短くなっていることから、1つの会社に勤め上げるという我々の親世代にとっては当たり前の考え方を変える必要があります。

また、まだ現在のシステムだと出産育児や親の介護などのライフイベントへの対応が十分に配慮されていません。

もちろん休暇制度などの制度は整備されていますが、特に中小零細企業では気軽に利用できない状況にあったりします。

そして長寿化していく中で、高齢者にどのように働いてもらうかという点も考えていく必要があります。

さらに言うと、そのように年を取っても働くようになっていく中で、長いスパンでどのように働くのかを考える必要があります。

今まであれば「週40時間のフルタイムで働く人の中で優秀な人間が役職を得ていく」というのが常識でしたが、例えば専門知識を得るために学校に通うので働くのは週20時間だけど優秀な人材というのも今後は当たり前になっていくと思われます。

そのような人材をどのように評価するのか、そもそもそのような働き方を会社として認めていくのかといったことも検討していく必要があるでしょう。

こういった変化は明日急に起こるものではなく、時間をかけてゆっくりと生じるものです。

ですが、「今そんなこと考える必要はないだろう」と放っておくと、気付いたときには完全に取り残されてしまいます。

まずは「人生100年時代」の到来によって今後どのような変化が起こり得るのか、『ライフ・シフト』及び『ライフ・シフト2』を読んで確認していただきたいと思います。