前回「消費税のインボイス制度に備えよ!」という記事を書きました(コチラ)が、やはり初めて知ったという人も多かったようで結構反響がありました。

そこで、今回この制度についてもうちょっと詳しく解説したいと思います。

概要についてはぜひ前回の記事でご確認ください。

さて、インボイス制度の論点は自分が売り手なのか、買い手なのかによって変わってきます。

ということで、売り手と買い手に分けて論点整理をし、今回は売り手の論点について解説したいと思います。

<売り手の論点>

売り手としての最大の論点は「適格請求書」を発行できるかどうかです。

適格請求書を発行するためには事前に税務署に申請をして、「適格請求書発行事業者」になる必要があります。

適格請求書に記載すべき項目の一つにこの適格請求書発行事業者としての登録番号がありますが、税務署に申請することでこの登録番号が発行されます。

なので、現在消費税の納税義務がある事業者(課税事業者)でも必ず適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要があります。

次に現在消費税の納税義務がない「免税事業者」の場合ですが、前回解説した通り免税事業者のままだと適格請求書発行事業者の登録申請をすることができません。

適格請求書発行事業者であることと課税事業者であることはワンセットなのです。

ここで特に問題となるのが、BtoBのビジネスを行っている免税事業者です。

取引先は会社や個人事業主ということですから、相手先(つまり買い手)はその支払について経費にするでしょうし、また消費税の計算上、控除しているはずです。

それが、2023年の制度開始後、交付を受けた請求書が適格請求書じゃなかったら「え!?消費税控除できないじゃん」という話になり、「だったらおたくとの取引は終了させてもらう」となってしまう恐れがあります。

それを回避するためには適格請求書発行事業者の登録申請を行う必要がありますが、それは消費税の納税義務が発生することも意味します。

しかし免税事業者というのは売上が1,000万円以下の小規模な会社や個人事業主です。

ここに消費税の納税額が年間何十万も発生すると、かなりのインパクトとなります。

「消費税を払わなくてもいいように売上1,000万円以下になるように調整していた」という事業者は、この機会に1,000万で蓋をせずにもっと売上をあげる方向に方針転換を行うことも必要でしょう。

なお、このケースがどれぐらいあるのか分かりませんが、BtoBのビジネスを行っているけど、その取引先も小規模事業者であるということもあり得るでしょう。

相手先(買い手)も免税事業者だったり、または課税事業者でも簡易課税制度を適用している事業者なのであれば、支払った消費税が控除できるかどうかは関係ありません。

取引先が限られており、かつ全社免税事業者又は課税事業者だけど簡易課税制度を適用している事業者なのであれば、無理に課税事業者にならずに免税事業者のままでも相手先も困らないのでOKという話になります。

あとは基本的にBtoCのビジネスを行っているケース。

相手先(買い手)が一般消費者であり、別にもらう請求書や領収書が適格かどうかなんて関係無いということであれば免税事業者のままでもそんなに影響は無いと考えられます。

ということで、売り手にとっての最大の論点は現在免税事業者である事業者が制度の導入に合わせて課税事業者になるかどうかという点になります。

また、このことに関連して、よく起業する際に「最初に個人事業で2年間、そのあと法人成りして2年間、合わせて4年間消費税の免除を受けることができる」という話を聞くかと思いますが、この前提が覆されるという点にも注意が必要です。

BtoBのビジネスで起業するのであれば、1年目から課税事業者になる必要も出てくることでしょう。

いかがでしょうか?

現在すでに課税事業者なのであればそこまで大きな論点はないのですが、免税事業者の場合には結構論点があります。

何よりも今まで払わなくても良かった税金を払う必要が出るのであれば、それはかなりのインパクトです。

納税することになったらどれぐらいの金額になりそうなのか、消費税の納税が発生することで年間の可処分所得はどう変化するのかについては今のうちにシミュレーションしておくと良いでしょう。