先日『なぜソニーは好調なのか?「選択と集中」という幻想』という毎日新聞社のネットニュースを見つけました。

ソニーはトリニトロンテレビやウォークマンなどの画期的な商品で戦後の高度経済成長を牽引しましたが、バブル崩壊後は他の総合電機メーカーと共に厳しい経営状況にありました。

それが、2021年3月期の最終利益は前期比37.4%増の8000億円になる見込みとかなりの好調ぶりが伺えます。

同記事ではその要因の一つとして多角化が挙げられると指摘しています。

実際過去売上の7割程度を占めていたエレクトロニクス(電気製品や電子部品)の比率が、2019年度には4割弱にまで減少し、ゲーム&ネットワークサービス、金融、映画、音楽などと多角化しています。

「選択と集中」は経営戦略における常道と言え、GEのジャック・ウェルチ氏の「企業は世界で1位か2位になれる事業だけやるべきだ」という言葉は非常に有名です。

では今の時代、選択と集中はもう馴染まない考え方、それこそ「幻想」なのでしょうか?

ソニーやGEのような大企業の話だとピンとこないので中小零細企業で考えてみましょう。

中小企業にはヒト・モノ・カネという経営資源が潤沢にあるわけではありません。

また少し前まではそんな経営資源の不足を補う手段として「時間」という資源を活用し、「人よりも2倍も3倍も働くことで成果を出す」ということもできましたが、近年では残業時間の上限規制など長時間労働をさせない法整備が進み、それもできなくなってきました。

そんな乏しい経営資源を色んな事業に分散してしまっては、どれも中途半端になってしまうので、「選択と集中」というのは中小零細企業にとっては必然の経営戦略だと言えます。

その一方で、今回のコロナ禍により飲食店やスポーツジム、ライブハウスなど特定の業界が大打撃を受けました。

今年の飲食店の倒産件数が過去最高を更新するのではないかと言われていますが、飲食店のみを経営していた会社(あるいは個人事業主)は、コロナによる来店客の激減を補う別の収入源があるわけではないので、実際非常に厳しい状況かと思われます。

ということは中小零細企業にとって「選択と集中」という戦略は必然である一方で、収入源が1つしかないと、今回のような有事の際にその収入源が絶たれてしまうと、途端に倒産・廃業の危機に陥ってしまうという側面があるということになります。

ではどうすればいいのか?

まずはやはり「選択と集中」によって、平時の際にきちんと継続できる柱となるビジネスモデルを確立するべきでしょう。

最初から多角化を目指すのは得策ではありません。

そうやって確立できた後がポイントです。

従来であれば、そのビジネスモデルで規模の拡大を図ります。

例えば飲食店が上手くいったら2号店、3号店をオープンしていくといった具合です。

しかし、今回のコロナ禍のように「飲食店は営業自粛」「飲食店に行くのは控えましょう」ということになってしまうと全てのお店が打撃を受けてしまいます。

コロナもそうですが、何か売上が上がらなくなってしまうようなリスクが発生したとしても、その影響を受けない(受けにくい)収入源を他に持つことが重要になってきます。

ここで今までのノウハウが全く活かせない異業種に参入するのはリスクが高すぎなので、やはりある程度ノウハウを活かせるジャンルになるでしょう。

飲食店ならやはりデリバリーやテイクアウトでしょうか。

ただし、コロナ禍によってデリバリーやテイクアウトを始める飲食店が一気に増えましたので、普通のことをやっていると差別化できませんから、そこは頭を使う必要があります。

テレワークが増えましたから、自宅で仕事をするサラリーマンのために栄養満点なお弁当を宅配するサブスクリプションサービスもアリでしょう。

もちろん、やはり中小企業であることにかわりはないので、この際にあれもこれもと手を出してはいけません。

まずは柱となる事業を確立するために「選択と集中」。

それが軌道に乗ったら、リスク分散の意味も兼ねて別の柱を作るために「選択と集中」。

それも軌道に乗ったら・・・。

という形でビジネスを展開していく会社が有事に強い会社になると思うのですがいかがでしょうか?