私は面白い本があると寝る間も惜しんで読み進めてしまい、ガッツリ寝不足になってしまうのですが、最近ですと『下町ロケット』の最新作『下町ロケット ゴースト』『下町ロケット ヤタガラス』がまさにそんな本で、お陰様で数日寝不足になりました。

そして、この2冊を読了した後に読み始めた本書『破天荒フェニックス』もそんな1冊となりました。

お陰様で連続して寝不足です(笑)。

 

本書は誰もが倒産すると言い切ったメガネチェーン店「オンデーズ」を買収した田中修治社長が、会社を再生させていく過程で襲いかかる様々な困難を乗り越えていく様が書かれた「エンターテイメントビジネス小説」です。

実は私はオンデーズのことは全く知らなかったのですが、8月に参加した世界で一番楽しい学校「サーカス!」のスポンサー企業ということで「へ~、そうなんだ」とその存在を知り、そしてその社長である田中さんが書かれた本書をサーカス!の主催者であるキングコングの西野さんが「スポンサーだからとか関係なくマジで面白いから絶対読んだ方がいい!」と何度もおっしゃっていたので、「じゃあ読んでみるか」となった経緯があります。

 

さて、物語はひょんなことから田中社長がオンデーズを買収する場面から始まります。

オンデーズは前経営陣の放漫経営により年商20億に対して有利子負債14億というなかなかの状況(利益20億じゃなくて年商20億です)。

普通ならこんな状況の会社は買収しません。

しかし、田中社長は「メガネ業界にはまだ伸びしろがある!」と判断し、会社を買収すると同時に赤の他人が作った借金14億も背負うことになります。このとき30歳。

30歳で14億の借金。この時点で十分に破天荒です。

※ちなみに最近「破天荒」が「はちゃめちゃ」「豪快」みたいな意味で使われていますが、正しくは「前代未聞」とか「今まで人が成し得なかったことを初めて行うこと」という意味になります。

財務担当の奥野さんは「まずは不採算店の閉鎖や人員削減など大規模なリストラを」と真っ当な意見をしますが、田中社長、全却下。

リストラはしない!それどころか逆に新店をオープンする!

終始こんな感じで、何とか資金繰りの安定化を図りたい奥野さんの淡い?期待を裏切り、これでもか!と攻めの手を打ち続ける”ミスター破天荒”田中社長。結末やいかに!?

という感じで、試練が襲い掛かり、それを何とか乗り越えるも、また新たな試練が襲い掛かり!というジェットコースターのような展開で、500ページぐらいある結構ぶ厚い本なのですが、先が気になって仕方がなく一気読みしてしまいました。

 

自分も経営者なので田中社長の攻めの主張にも「そうだよね」と思いながらも、やはり税理士としては財務担当の奥野さんについつい共感してしまいます(笑)。

「えー、やっと落ち着いたと思ったのに、また資金ショートの危機だよ!」という感じで大変だったと思いますし、きっと現在進行形で大変なんだと思います。

実際何度も「黒字倒産か!?」という場面がやってくるのですが、実際どんなに会社が黒字でもお金がないと倒産してしまいます。

資金のアテがないまま巨額の投資の決断をするのはある意味バクチでここは賛否両論じゃないかと思います。

ただ、それでも特筆すべきは田中社長の圧倒的な行動力です。

「四の五の言わずにまずは動こうぜ!」

そんな勢いが感じられる本書は起業家には是非とも読んで欲しいです。

また財務担当の奥野さんを始め、熱い社長には熱い仲間が集まるもので、熱き仲間との冒険譚としても秀逸な内容と言えます。

あと、悪役も魅力的で憎たらしさが半端ありません。やはり物語の面白さは悪役で決まる。

ドラマ化されたらあんな人やこんな人が演じたらさぞや憎たらしい演技をしてくれるんだろうな~と妄想が止まりません。

そんな熱き1冊を秋の夜長にいかがでしょうか?

ただし寝不足になったとしてもそこは自己責任で。

 

ちなみに昨年末にナイキの創業者であるフィル・ナイトがその半生を語った『SHOE DOG』が出版され我が国でも話題になりましたが、あまり「自分が成功したのは〇〇をしたからだ」というメッセージを出さず、あくまでもエンターテイメント小説の体裁でどこに成功ポイントがあったのかを読み手が考える、というのは最近のトレンドなのかもしれないですね。

※読み終わるまでずっと表紙の人が田中社長だと思っていましたが、こちらはモデルさんでした(笑)