先日「ひふみん」こと加藤一二三さんのお話を聴きにビジネスEXPOに行ってきたのですが、実はもうお一人、お目当ての方の講演会がありました。

それがダイヤ精機株式会社社長・諏訪貴子さんです。

創業社長であるお父様の急逝に伴い主婦から社長に転身し、深刻な危機を乗り越えた波乱万丈の人生が昨年内山理名さん主演のNHKドラマ「マチ工場のオンナ」になった注目の経営者です。

実は昨年にも札幌で講演されており、その際にもお話を聴きに行きました(その時の記事はコチラ)。

基本的にはその際と同じ内容ではあったのですが、時間が経つと情報の入ってきかたも変わるもの。

そこで今回は前回取り上げた部分とは異なる気付き・学びについてシェアしたいと思います。

諏訪さんが注目されるキッカケとなったのが2013年の「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー」の受賞です。

実はこの年、諏訪さんは戦略的にこのような賞を受賞しようと動かれたそうです。

ダイヤ精機は自動車に関する1社依存型の下請会社だったのですが、リーマンショックや東日本大震災の影響で仕事が激減します。

「このままではいけない。なんとか新規開拓しなければ!」と思い飛び込み営業をするもののけんもほろろ。

「では知名度を上げるために広告を打とう!」と考えるも、果たして多額の投資をして広告を打ったところでどれだけの効果があるのだろうか?と思い、行きついたのが「何らかの賞を受賞して新聞に社名が載ればタダで知名度を上げられるはず」というもの。

そこで「勇気ある経営大賞」に狙いを定め、社員に「何とか大賞を獲りたいから協力して欲しい!」と訴えるも、社員からは「そんな名だたる企業もエントリーするような賞、ウチみたいな零細企業が獲れるわけがない。」と大ブーイング。

ここで諏訪さんが語ったことが非常に興味深かったです。

「経営者というのは先を見越して色々と妄想します。でも、社員はそんな先が見えないんです。社員が見ているのは『今』なんですね。

そんな社員に『賞をとって新聞に名前が載れば仕事が増えて・・・』なんて言ってもピンと来ない。

だから分かりやすく『今』の話をしたんです」

で、どんな話をしたのかと言うと

「賞をとったら賞金で焼き肉を食べに行こう!あと工場のトイレも改修するから」

というもの。

それで社員も「だったら応援するか!」となったというから単純なもの(笑)。

とは言え、このお話し、示唆に富んでいるなと感じた次第です。

やはり社員に経営者と同じ視点を持って考えろ、と言ってもなかなか難しいもの。

経営者は未来のことを考えるのが仕事ですが、社員は今目の前のことをするのが仕事ですからこれはやむを得ないもの。

だったら、経営者が考えている未来のことを今に落とし込んで理解してもらうしかありません。

結局狙っていた「勇気ある経営大賞」では大賞をとることができず、その他の賞も受賞することができません。

しかし、最後の最後に「日経ウーマン・オブ・ザ・イヤー」を見事受賞します。

そしてその授賞式の場で、スピーチをすることになるのですが、最前列に座っていた社員が大号泣、それを見た諏訪さんも号泣、そしてそれを見た周りの人も号泣と、涙なみだの授賞式になったそうです(ちなみにその話を聴いた私もウルッときました笑)。

そう、最初は反対していた社員も「何とか社長に賞をとらせたい!」という想いになっていたからこその大号泣だったんですね。

ということで経営者は将来を見てビジョンや経営理念を語り続けるということももちろん大事なことですが、基本的に『今』で生きている社員にそれを理解してもらうためにも、「今、どうするのか?」を語ることも非常に重要だという学びを得ることができました。

皆さんの会社で未来のことを今に落とし込む工夫、されていますでしょうか?