来年度の税理士試験から受験資格の要件が緩和されました。
従来の受験資格はざっくり言うと
①大学や専門学校で法律学や経済学を履修
②日商簿記1級合格
③税理士事務所などで2年以上の実務経験
のいずれかを満たしていることが要件となります(他にも細かい要件はありますがここでは割愛します)。
それが、来年からは以下のように変わります。
まず前提として税理士試験には必須の会計科目(簿記論、財務諸表論)と、必須+選択制の税法科目があります。
このうち会計科目については受験資格が不要、つまり上記①から③の要件が全て無くなり、誰でも受験できるようになります。
税理士試験には年齢制限はありませんので、高校生でも中学生でも小学生でもそれより若くても受験可能です。
たまに中学生で日商簿記2級に合格する子がいたりしますが、日商簿記2級に合格するレベルであれば、十分に税理士試験の簿記論や財務諸表論も合格できる可能性がありますので、今後は中学生で2科目合格ということも十分にあり得る話となります。
片や税法科目の方ですが、こちらは誰でも受験可能ということにはならず、①から③の要件は継続されます。
ただし、①の「法律学や経済学を履修」の部分が「社会科学に属する科目」とかなり範囲が広くなりました。
具体的には社会学、政治学、ビジネス学、コミュニケーション学、教育学、福祉学、心理学、統計学などが該当するということで、ある程度文系の科目を履修すれば法律や経済を学んでいなくても税理士試験にチャレンジできるようになります。
なぜこのように受験資格を大幅に緩和したのでしょうか?
それは受験者数の減少に歯止めをかけるためです。
2010年の受験者数は51,468人でしたが2021年の受験者数はその約半分の27,299人となっています。
受験者数が減ったからと言って合格率を上げることはありませんので合格者数も約半分となっています。
ということで税理士の数が減っていると言いたいところですが、ややこしいことに税理士の登録者数は年々増加しており8万人を突破しました。
試験を受ける人が減っているのに税理士になる人が増えているのには大きく2つの要因があります。
1つ目は税務署OBの存在です。
一定年数税務署で勤務するとほぼ自動的に税理士登録できるというのは有名な話ですが、ちょうど退職する世代のボリュームが大きいため新規で登録する人が増えています。
2目は弁護士や公認会計士など、税理士試験を受けなくても税理士登録する他士業が増えていることです。
どちらも将来需要が増えると考えられ合格者が大幅に増えましたが、蓋を開けてみればそこまで需要が増えなかったため、「じゃあ食っていくために税理士登録しようか」という人が一定数います。
ということで、税理士資格は国家資格の中でも試験に合格して登録する人が少ないというかなり特殊なものとなっています。
あとは単純に「将来AIに仕事を奪われる職業(資格)」の上位にランキングされていることから「取っても食えない」ということで嫌厭されているというのも大きな原因と言えるでしょう。
ということで、若者にとって税理士は受験資格の要件が緩和されてもあまり魅力のない資格なのかもしれませんがものは考えようです。
確かに将来、手続き業務の多くはDXの推進などによりわざわざ専門家がやらなくても良いものになることでしょう(し、税理士である私もそれを願っています)。
しかし、税金の専門家として経営者や資産家の良きアドバイザーとして求められる部分は必ず残ります。
税務署OBの方々は年齢が60歳を超えていることが大半で、若い専門家を求めているのであればミスマッチとなってしまいます。
また弁護士や公認会計士で税理士登録もしている人というのは、中には税金のことにも精通している素晴らしい方もいらっしゃいますが、しかし税理士試験勉強で税法を体系立てて学んでいないので、下手な人に顧問をお願いしてしまうと、「税金のことに全然詳しくない税理士」に当ってしまう可能性があります。
となると、受験者数が減っているこのタイミングであえて逆張りして税理士を目指すというのは戦略としてアリなのではないかと考えます。
実際周りの同業者も「採用したいけど全然応募がない!」と採用に苦戦しています。
超売り手市場の今ならかなり重宝してもらえるハズです。
この要件の緩和によって20代30代の税理士がもっと増えることを願います。