ここのところパワハラに関するお話をしてきましたので、今回も少し掘り下げたいと思います。

エアトリが3月に実施したアンケートによるとパワハラ防止法について知っていると回答したのは全体の約43%ということで浸透度はまだまだのようです。

ただし、パワハラ防止法についてどう思うかという質問に対しては「賛成」が約80%ということで法律によって牽制するということには概ね賛成のようです。

また、パワハラを受けたことがあるかという質問に対しては約60%の人が「ある」と回答しています。

その内容ですが、「精神的な攻撃」がトップで、以下、「過大な要求」「人間関係からの切り離し」「個の侵害」「過小な要求」と続いています。

具体的には

「異常な量の仕事が与えられる(長時間残業せざるをえない業務量にされる)」

「自由に有給取得ができない(取得すると嫌味を言われる)」

「休日も構わずLINEが来る」

「外見に対して何か言われる」

といったような声があがっています。

パワハラが原因で休職や退職をしたことがある人は約28%ということで、全体の約4分の1の人はパワハラが原因で休職や退職をしたことがあるということになります。

今回のアンケートから、まずは「叩く」「物を投げつける」といった「身体的な攻撃」はさすがにほとんど行われていないということが分かります。

一昔前はミスをした部下に対して「バカヤロー」と頭を叩くなんて行為は普通にありましたが、今は非常に分かりやすい「ザ・パワハラ」とも言えるような行為であり、そういうことをする人は減ったようです。

そのかわりに増えたのが「精神的な攻撃」です。

「人格を否定するような言動を行う」

「必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返す」

「他の労働者の前で大声で威圧的な叱責を繰り返し行う」

といったような行為は精神的な攻撃となります。

この辺は、かなり極端な事例となりますが、大ヒットドラマ『半沢直樹シリーズ』をご覧いただけるとよく分かると思います。

また、パワハラが原因で休職や退職をしたことがある人が全体の4分の1にものぼるというのも深刻な問題と言えます。

ある意味、そこまで深刻なので、パワハラ防止法が施行されたとも言えるのですが、休職や退職をしなくても精神的ダメージによりパフォーマンスが落ちてしまった人も相当数いることを考えるとパワハラによる経済的損失はかなりのものになると思われます。

さて、今回のアンケート調査により、パワハラの中でも特に「精神的な攻撃」が多いということが分かりました。

そしてこれは他のパワハラの類型に比べて行為を受けた人がどう感じたかが大きく影響する行為となります。

「身体的な攻撃」は前述のように「叩く」「物を投げつける」といったように第三者が見てもパワハラと分かりやすいものです。

しかし「精神的な攻撃」は第三者が見て「これは適切な指導だな」と思っても、当事者は「パワハラだ!」と感じる可能性があります。

私も今回のパワハラ防止法の中小企業への適用のタイミングでクライアントでの社内研修を行っていますが、「パワハラに該当するかどうか?」という事例では結構意見が分かれます。

それだけ線引が難しいと言えるのですが、だからと言って見て見ぬふりをしていると、ある日突然優秀な社員が辞めて、しかもパワハラで訴えられるといったことになりかねません。

そこまでいかないにしても、社員の側は「うちの会社はパワハラが横行している」と感じ、モチベーションが下がり、仕事のパフォーマンスを落としてしまうかもしれません。

「うちの職場は人間関係が良好だから大丈夫!」という「うちの子に限って」みたいな考え方は捨てて、社労士や弁護士などの専門家の力を借りながら、社内でしっかりとしたガイドラインを設けていく必要があるでしょう。