フリーライターである丸井汐里さんによる『被災地で生まれた「1粒1000円」の超高級イチゴは、日本の農業を変えるかもしれない』という記事は非常に興味深い内容でした。

被災地というのは東日本大震災の被災地という意味で、それはそれで非常に重要なことではあるのですが、今回は「1粒1000円」という部分にフォーカスしてみたいと思います。

宮城県の小さな町、山元町で栽培されている「ミガキイチゴ」は「1粒1000円」もする超高級イチゴです。

仕掛け人は農業生産法人GRA代表の岩佐大輝さん。

GRAでは「とちおとめ」「よつぼし」とオリジナル品種の「ハナミガキ」の3種類のイチゴを栽培しており、その中でも糖度、果形、イチゴの箱詰めの仕方など、全ての基準をクリアしたものだけが「ミガキイチゴ」というブランドとして1粒1000円で店頭に並ぶことになります。

収穫したイチゴのうち「ミガキイチゴ」に選ばれるのは約半分。

それをレギュラー、シルバー、ゴールド、プラチナの4階級に分けて展開していますが、最高級の1粒1000円のプラチナになれるのは500粒に1粒だけです。

岩佐さんは元々IT業界にいた方ですが、震災を機に故郷にUターンして、イチゴの栽培をスタートさせます。

ただ、イチゴは品目などでキロいくらと相場が決まっているので、これまでと同じように売るのは厳しいと考え、全く別の土俵で勝負しようと決めます。

小売店の野菜売り場ではなく都内の百貨店など高級路線にターゲットを定め、贈答品としての需要を見込んだマーケティング戦略を展開。

それが見事にヒットします。

農業の場合、農協が買い取ってくれるので自分で販路開拓や値付けなどを考えず、栽培することに専念することができるというメリットがある一方、どんなに高品質なものを作っても買取価格は同じという側面があります。

そこで、最近では直販を始める農家も増えてきていますが、それはそれでライバルとの競争が待っています。

我々消費者としても、一昔前までであれば直販というのは珍しかったですが、最近では割とよく見かけるようになり選択肢が増えました。

このことにより直販に打って出たものの、選ばれない、売れないというケースも増えてきました。

そういう中で、この「ハナミガキ」のような高級路線というのは大きな差別化となります。

当然ながら一般的な農協経由で売られるイチゴ、直販で売られるイチゴは競合となりません。

「日常的に食べるイチゴ」から「贈答用のイチゴ」へのポジションチェンジとなります。

もちろん、「贈答用」というカテゴリーにはメロンやマンゴーといった別の高級果物やお菓子などのライバルがいるので、単純に贈答用にポジションチェンジしたからといってうまくいくとは限りません。

しかし、今回の事例は農業だけでなく、他の業界でもガラッとポジションチェンジをすることによって可能性を高めることができるという好例だと言えます。

例えば我々税理士業界も、顧問料の相場というのは低下傾向にありますが、なにかポジションチェンジを図ることによって大幅に単価を上げることができるかもしれません。

というか、業界的にはそのような取り組みをする税理士が増えていますし、それはそれで良いことだと思います。

「安さで勝負」ではなく「高さで勝負」なんて面白いではありませんか。

あなたのビジネスに応用できる余地はありませんか?