日本食糧新聞の記事が非常に興味深かったので、取り上げてみたいと思います。

近年ビスケット市場が好調だそうです。

コロナ禍の影響で生活者が冒険を避け、購買経験のある商品を選択する傾向が高まり、ロングセラーブランド強化の流れが顕著となっている中、既存ブランドを活用した不二家の「カントリーマアム チョコまみれ」がビスケットカテゴリーで、久々の記録的ヒットを達成しています。

この「カントリーマアム チョコまみれ」は日経トレンディの「2021年ヒット商品ベスト30」で11位に選出されています。

マーケティング戦略的に上手いなぁと感じたのがパッケージの中心に描かれたゆるキャラ「まみれさん」をあえて謎のキャラとした点です。

2019年11月にセブンーイレブンで先行発売したところあっという間に完売となり、その勢いで2020年に全国販売するのですが、その間、この「まみれさん」が何者なのかの説明は一切無し。

そのことが逆に関心を呼び、面白がられたというのです。

ということで、ビスケット市場はいい感じなのですが、その一方で、ビスケットの主要原料である小麦粉、砂糖、油脂の値上げが相次いでいます。

さらに包装資材や物流費の上昇も収益を圧迫しています。

本来であれば「もう経営努力でも原材料の値上げ分をまかないきれないので値上げさせてもらいます」ということで、値上げしてもよさそうなところなのですが、どうやら業界的にそれが難しいようなのです。

というのも、2008年に大手総合菓子メーカーがビスケットの定番商品の値上げを実施した際、一部大手小売業の猛反発を受け店舗から商品が撤去されるという事態を招いたという過去があるからです。

ビスケット業界にはスナック菓子業界のように圧倒的な市場シェアを持つメーカーが存在しないことから、力関係的には「メーカー<小売業者」となってしまうので、小売業者にそっぽを向かれると売り場に置いてもらえないという事情があるのです。

そこで、やむをえず品質改良やパッケージ変更などのリニューアル時に、価格は据え置き内容量を減量する「減量値上げ」で対応してきました。

ただ近年では「ステルス値上げ」と消費者の反発を受けることも多くなりました。

先ほどのカントリーマアムも大袋の内容量はここ10年で減り続けており、このままいくと2040年頃には内容量がマイナス1枚になってしまうという「カントリーマアム2040年問題」などという説があるぐらいです(ぜひググってみてください)。

ビジネスは適正利潤を獲得するからこそ継続することができます。

これだけ原材料費が値上がりしているのに、ユーザーが「値上げは許さない」と言っていては結局メーカーが潰れてしまいます。

私は個人的には知らないうちに「減量値上げ」をされるよりは堂々と「値上げします!」と言ってくれた方が良いと思っていますし、その方がよっぽど健全な経済活動だと思うのですがいかがでしょうか?