赤字会社を利用した大規模な税逃れ事案が明らかになりました。
千葉県市原市の経営コンサルタント会社「トーマスコンサルティング」とその顧問先の約50社が東京国税局の税務調査を受け、昨年までの7年間に計20億円の所得隠しを指摘され、重加算税を含む法人税などの追徴税額はトーマス社と顧問先を合わせて約5億円になるとのこと。
さて、この事案、手口はかなり粗いものとなります。
まずは黒字で節税のために利益を圧縮したい顧問先に対して相当な額の赤字を抱えた顧問先企業をあてがいます。
そして、黒字会社から赤字会社に対して利益の大半を架空の外注費名目などで送金させます。
赤字会社は手数料として数%~十数%を抜いた上で、大半のお金を指南役であるトーマス社の元社長にバック。
元社長は一部を謝礼として受け取り、残りのお金を送金元の黒字会社に戻していました。
この一連の流れによって、送金元の黒字会社の所得は大幅に圧縮され、赤字会社と元社長に流れた手数料と謝礼を差し引いても、納付する法人税額は大幅に減っていました。
もちろん「架空の外注費名目」という時点で脱税に該当しアウト。
さらには元社長は受け取った謝礼を申告しなかったそうですが、これももちろんアウト。
この申告しなかった謝礼はトーマス社の所得に当たるとし、トーマス社に対しても追徴課税が行われています。
また、この元社長が実質的に経営していたトーマス税理士法人が申告手続きを担当していましたが、所属する税理士は全て国税局OBだったそうです。
元々は課税庁側にいた人間によるこのような粗い税逃れ、バレないと思ったのでしょうか?
しかも、このOB税理士は税務調査の開始後に税理士を廃業しています。
税理士法では、今回のように税理士が不正に関与した場合、国税当局が調査して、業務停止などの懲戒処分を行うこととなっています。
そして処分時には官報などで名前や不正の概要が公表されます。
国税庁のホームページにも掲載されます。
しかし、対象は税理士に限られ、今回のように廃業してしまうと調査や処分の対象外となってしまい、当然に名前も公表されずに済んでしまいます。
制度上、また税理士として登録することは可能ですし、その際には「前科なし」という綺麗な身体で登録できてしまいます。
「どうせバレたらとっとと廃業して、ほとぼりが冷めたらまた税理士登録すればいい」
と思ってこんな粗い脱税スキームを考え、実行したのかどうか分かりませんが、いい迷惑なのは顧問先の会社です。
普通は顧問税理士はこういうことを止める存在のはずなのですが、逆に顧問税理士(と繋がっている指南役)が提案して実行されています。
中には「これは脱税なのでは?」と思った経営者もいると思いますが、「でも顧問税理士が言うなら大丈夫か」ということであまり深く考えずに乗ってしまったのではないでしょうか。
「うまい話には裏がある」と言いますが、もしも今回のような怪しい節税方法を持ってくる人がいれば、まずは疑ってかかっていただきたいと思います。
それにしてもこういう愚かなことをする同業者がいると税理士全体の評判も悪くなるので、本当にやめて欲しいところです。