今年7月、中央最低賃金審査会の小委員会は2021年度の最低賃金について、すべての都道府県で28円引き上げ、全国平均で現在の時給902円から930円とする目安を示しました。
昨年度は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で雇用を守ることが優先され引き上げの目安を示すことができていませんでしたが、今年度は2019年度の27円を上回り、最低賃金が時給で示されるようになった2002年度以降で最も大きな引き上げ額となっています。
さらにこれを受けて北海道労働局長の諮問機関である北海道地方最低賃金審議会は8月5日、道内の最低賃金について現在の861円から28円引き上げて889円にすることを労働局長に答申しました。
これにより北海道の最低賃金は28円引き上げとなることがほぼ確定しました。
このまま行けば新しい最低賃金889円は10月1日から適用されることとなります。
さて、最低賃金が引き上げられると経営の現場にどのような影響があるのでしょうか?
まず労働者側は収入が増えます。
特に現在最低賃金やそれに近い時給で働いているパートタイマーやアルバイトは10月からは時給が引き上げられますので確実に収入が増えます。
仮に現在の時給が861円で週20時間、月に80時間働いている場合の総支給額は68,880円となりますが、これが時給889円になると71,120円ということで約3%収入が増える計算となります。
ということは裏を返すと会社側としてはその分だけ人件費が増えるということになります。
特に影響が大きいのがパートタイマーやアルバイトが多いコンビニや飲食店です。
飲食店はコロナによる緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による時短要請などによって売上が激減しているお店も多いでしょうから、そこに人件費が増えるとなればダブルパンチです。
行政サイドは最低賃金の引き上げによって会社の人件費が増える分は生産性の向上でカバーしなさいと言いますが、コンビニや飲食店で生産性を向上させろというのは酷な話です。
両方とも特別な訓練を受けていない高校生や大学生でも回すことができるビジネスモデルな訳ですからね。
そうなると今後予想されるのはパートタイマーやアルバイトの数を減らし、そのぶん残った人の業務量が増えるという事態です。
もちろんパートタイマーやアルバイトだからといって簡単には解雇できませんが、退職者が出ても人員補充をしないという形で人数をコントロールする流れはこれから増えていくことでしょう。
またコンビニではコロナ前にも人件費を抑えるためにオーナーさんが過重労働をして倒れるなどの問題がありましたが、残念ながらそういう事例がもっと増えるのではないかと思われます。
国の方針としては今後も最低賃金は継続して引き上げていく方向です。
最低賃金の引き上げにより人件費が増えてもきちんと利益が出るビジネスモデルなのかどうか、ぜひこの機会に見直していただきたいと思います。