今回は前回の「売り手の論点」から立場を変えて買い手としてのインボイス制度の論点について解説したいと思います。

まず買い手が免税事業者の場合、相手先から交付される請求書が適格かそうじゃないかはあまり関係ありません。

なにせ自分は消費税を納める義務がないわけですから。

売り手として免税事業者で問題ないのであれば、買い手としても特に論点はありません。

次に買い手が課税事業者の場合ですが、これは消費税の計算方法が原則課税なのか簡易課税なのかによって変わってきます。

まず、簡易課税を選択している場合ですが、やはり相手先から交付される請求書が適格かそうじゃないかはあまり関係ありません。

インボイス制度に関係なく、簡易課税というのは売上で預かった消費税だけに着目し、あとは業種に応じて「ざっくり支払った消費税をいくらで計算しましょう」と簡易的に計算する制度となります。

なので納税額を計算する上で、請求書が適格かそうじゃないかは影響しないというわけです。

残るは原則課税を選択している(もしくは強制的に原則課税が適用される)場合です。

この事業者はインボイス制度開始後は、相手先から交付される請求書が適格なのかそうじゃないのかによって消費税の納税額が変わってきます。

特に継続的に取引があり、支出額も結構な額になる業者に関しては適格請求書を発行できる「適格請求書発行事業者」なのかどうかを事前に確認しておく必要があるでしょう。

その上で交付される請求書が適格なのかそうじゃないのかをきちんと確認して会計ソフトへの入力を行う必要があります。

現在は支払った消費税については大雑把に分類すれば「10%課税」「8%課税」「課税対象外」のどれかに該当します。

ここでの課税対象外というのは例えば給与や保険料などのようにそもそも消費税が課税されない取引を意味します。

それが制度開始後はもしも適格請求書ではない請求書の交付を受けてしまった場合は、仮に消費税10%又は8%が上乗せされて請求されていたとしても「課税対象外」として処理しなければなりません。

また前回説明しませんでしたが、免税事業者に対する支払いについては制度開始と同時にいきなり全額控除できなくなるわけでなく、段階的な経過措置が設けられています。

具体的には2023年10月から2026年9月までは80%控除OK、

2026年10月から2029年9月までは50%控除OK、

そして2029年10月以降は一切控除できない、

という流れとなっています。

80%控除OKというのは例えば免税事業者に対して本体価格10,000円、消費税1,000円、合計11,000円の支払いをした場合、控除できる消費税は1,000円×80%=800円になるという意味となります。

ということは、経過措置期間中は「10%課税(100%)」「10%課税(80%)」「8%課税(100%」「8%課税(80%)」といった具合に分類する必要があるわけです。

なんとなくイメージしていただけると思いますが、会計ソフトの入力作業の事務負担がかなり増えることが想定されます。

そして我々税理士の作業量もかなり増えます。

原則課税を適用しているクライアントに関しては基本的には全ての請求書や領収書をチェックして適格かそうじゃないかを確認し、会計ソフトの入力が正しいかどうかの突合をしなければなりません。

そうなると、顧問料の値上げという話が出てくることもあるでしょう。

会社としてインボイス制度の導入によって別に売上が増えるわけでもなんでもなく、事務負担は増え、さらに税理士の顧問料も増える。

なんとも踏んだり蹴ったりな話ですが、でもそういう制度が2年後にはスタートするのです。

ぜひ今のうちに理解を深めて事前対応をしてください。