過去2回に渡り「税理士が全然アドバイスをしてくれない」問題を解決する方法についてお話ししてきました。
一つは「そもそも安い報酬であれもこれも求めたってそりゃ無理ですよ」というもの(求めるものがあるのであればそれに見合った報酬をキチンと払いましょう)。
もう一つは「そもそも税理士の言うことを聞くつもりあります?自分にとって都合の良い話、自分が聞きたい話しかアドバイスとしてカウントしないという前提だとこちらもアドバイスしようがありませんよ」というもの。
シンプルにお金の問題と、そしてもう一つはマインドの問題ということになります。
しかし、世の中にはきちんとそれなりの報酬を支払い、どんなアドバイスでも謙虚に聞く姿勢を持っているにも関わらずちゃんとしたアドバイスをしてもらえないという不満を抱えた経営者もいらっしゃるようです。
ここでそもそも論となりますが、「経営のアドバイス」って何でしょうか?
我々税理士側も安易に「経営のアドバイスをします!」と謳っていますが、これはかなり抽象的な話です。
一口に経営と言っても、「商品開発」「マーケティング」「理念浸透」「採用戦略」「人材育成」「財務管理」「仕組化」「顧客フォロー」など様々な要素があります。
我々税理士は税金のプロですので、税金周りのアドバイスというのは当然に行うべきです。
また、そこから派生して財務上の数字を把握している訳ですから資金繰りや資金調達などについてのアドバイスも求められる部分でしょう。
ではそれ以外は?と言うとそれ以外の部分は別に専門分野でも何でもありません。
マーケティングや採用戦略、人材育成などについては別に得意でも何でもないので、そこについてアドバイスをしろと言われても困ってしまいます。
仮に従業員が何十人も何百人もいる税理士事務所を経営している所長税理士であれば、それだけの規模の組織をマネジメントしている経験から実践的なアドバイスをしてくれると思いますが、ただもうそのレベルになると、所長税理士が直接お客様を担当することは基本的にはないでしょう。
職員が担当者になるのが一般的ですが、要はサラリーマンなので経営者視点でのアドバイスを求めるのは酷というものです。
もちろん私にも勤務時代があり、何社も担当させていただきました。
その当時から「税理士は単に税金や会計のことだけでなくマーケティングやマネジメントなどについてもアドバイスできる存在であるべきだ」という想いのもと、本を読んだりセミナーを受講したりして得た知識でアドバイスをしていましたが、それでもその程度の知識です。
ましてや、税理士事務所の大半の職員はそんなマーケティングやマネジメントについて学んだりしていませんから、そのようなアドバイスを求めたところで役に立つアドバイスを得られるとは思えません。
ということで、実は税理士事務所が謳っている「経営のアドバイスをします!」というのは実は非常に狭い範囲のことを指すのです。
まずはこの認識を税理士側と経営者側で統一しておかないと不幸なことになってしまうでしょう。
ちなみに私はどうしているかと言うと、数年前に高田先生とご縁をいただいたことにより、「商品開発やマーケティングなど売上に直結するアドバイザーを高田先生にお願いすれば、この部分でも顧問先のお役に立てる!」ということで私の本やセミナーで学んだ程度の知識ではなく、高田先生というプロの非常に実践的な智慧を顧問先に提供する体制を構築しました。
もちろんその部分のアドバイスは求めないという方もいますので、そういう方はシンプルに税務の顧問契約のみで私も税務・会計・資金繰り関係のアドバイスのみに専念します。
商品開発やマーケティングなどについてもアドバイスを求めるという方にはコンサル契約で別途報酬をお支払いいただき、高田先生にガッチリとサポートしていただいています。
こうすれば、必要としているサービスに対応する報酬だけを支払えば良いですし、こちらもどこまでの範囲をアドバイスすれば良いのかも明確ですので、経営者も税理士も不満なく良い関係を築くことができます。
最後にまとめますと、「税理士が全然アドバイスしてくれない」を解決する3つ目の方法は
「そもそも何のアドバイスを求めているのかを明確にし、それを税理士と共有すること。その上で税理士の範疇を超えているのであれば、その部分は税理士ではなく別の専門家にお願いする」
ということになります。
「ここまでの範疇であればアドバイスをしますよ」と明確にした上で、でもその部分について全然アドバイスをしてくれないということであれば、それは約束を果たしていないということになりますから、そこで改めて税理士変更を検討されれば良いのではないでしょうか?