4月4日付けの北海道新聞朝刊に「ポイント還元 キャッシュレス決済増 中小・零細 資金繰り圧迫」という気になる記事が掲載されていました。
昨年10月の消費税同税に伴うポイント還元制度でキャッシュレス決済を使う客が増えた結果、資金繰りに苦しむ中小零細企業が増えており、さらにはそれが一因となって倒産した事例もあるそうです。
これはどういうことかと言うと、キャッシュレス決済は現金化されるまでの期間が決済事業者によってまちまちです。
例えばラインペイは月末締め・翌月末払いということで、現金化されるまで最大2ヶ月もタイムラグが生じてしまいます。
そうすると、それまでは売上は現金としてすぐに手元に入ってきたのが、キャッシュレス決済となったことで手元に入るのにタイムラグが生じるようになり、支払いのためのキャッシュが不足してしまいます。
特に仕入があるような業種だとこのタイムラグの影響は大きく、売上による入金は遅くなるのに仕入代金の支払いのタイミングが今まで通りだと、その仕入れた商品自体は売れているのに、まだ手元に入金されていないから支払いたくても支払えないということになってしまいます。
実はビジネスが継続できなくなるのは赤字になった時ではなく、キャッシュが足りなくなった時となります。
「黒字倒産」という言葉があるように、会計上どんなに利益が出ていてもキャッシュが足りなくなってしまうとそこで事業終了となってしまうのです。
消費税増税による売り上げダウンをフォローするために導入された制度によって逆に倒産・廃業してしまうというのはなんとも皮肉な結末と言えるでしょう。
資金繰りにおける鉄則は「入金はなるべく早く、出金はなるべく遅く」です。
だから売上による入金はなるべく早いに越したことはありませんし、理想は前金ビジネスです。
逆に支払の時期はなるべく遅い方が資金繰りに余裕が生まれます(ただしむやみに支払を遅らせると信用を失います)。
キャッシュレス決済がスタートし、多くのお店で導入していた時に、昔ながらの商店街のおじちゃん・おばちゃんが「なんとかペイとか言われてもよく分からないから、うちは今まで通り現金しか扱わない」とインタビューで答えている姿を見かけましたが、それはそれで正しい選択だったと言えなくもありません。
しかし、今回の資金繰りの話は、会計事務所の新人が真っ先に習う基本的な話で、今回「キャッシュレス決済倒産」してしまった会社の経営者はちょっと学んでいればそのような事態は回避できたのではないかと思われるので、非常に残念です。
と同時に税理士が関与して、きちんと毎月会計データを確認していれば「このまま行くとキャッシュフローがあぶないですよ!」とアドバイスできたのではないかと思われます。
こういう部分をしっかりとサポートできる税理士でありたいものです。
みなさんは是非ともお気をつけください。