3月28日放送の『カンブリア宮殿』では「逆襲温泉スペシャル~日本の宝を磨いて、町を変えろ!~」というテーマで群馬・草津温泉と新潟・湯沢温泉の再生の取り組みが取り上げられていました。
このうち草津温泉は1000年以上の歴史があると言われる名湯で、昔からずっと観光客で賑わっているものとばかり思っていました。
しかし実際には1980年代に大規模ホテルを次々に建設したものの、その後のバブル崩壊により観光客は激減、廃業した宿と空き地の町となっていました。
その建て直しを行ったのが、現町長の黒岩信忠さんです。
それまで歴代の町長は旅館組合から選ばれていましたが、黒岩さんは草津町出身で中学卒業後、燃料商を起こし、東京の竹下通りにビルを持つまでに成功した叩き上げの実業家です。
黒岩さんは町長に当選するとすぐに改革を断行します。
草津温泉と言えばその中心にある「湯畑」が有名ですが、町長就任時には湯樋はボロボロに老朽化し、また周りには廃業した旅館の跡地が無計画に駐車場になっていたりととにかく全く魅力的ではありませんでした。
そこで、まずはこの中心にありシンボルでもある「湯畑」及びその周辺の整備に巨額の投資を断行します。
というのもまずは「湯畑」が魅力的になりそこに人が集まるようになれば、必ずそこを起点として周りの温泉宿やお土産屋さんなどにも人が流れていくとにらんだからです。
名付けて「シャンパンタワー作戦」。シャンパンタワーの一番上のグラスにシャンパンを注げば、どんどん下のグラスにも流れていくという例の理論です。
ビジネスの世界ではお馴染みの理論ですが、行政の人がこういうことを言うのはなかなか珍しい気がします。
実際、「中心地に駐車場がある方が便利だから無くされると困る。客が減ったらどうするんだ」とか「中心地ばかりえこひいきして不公平だ」という不満の声も挙がったそうですが、自分の信念を貫いて決行。
多くの政治家はここで日和ってしまい撤回しますが、そこを押し通したのも黒岩さんのスゴいところです。
結果として、湯畑及びその周辺を徹底的に整備することによって、目論見通りまた人が集まりだします。
さらには老朽化していて魅力を失っていた旅館や商店なども改装するとお客が来るということが分かり、次々にリニューアルをすることに。
そうやって町全体で魅力を高めた結果、観光客が増え一時期は60億近くあった町の借金も10年かからないで半分近くまで減らすことに成功します。
このお話は温泉の、しかも行政の事例とはなりますが、ビジネスにも十分に使える話です(というか、そもそも黒岩さんがビジネスの理論を行政に持ち込んだ)。
ビジネスをしているとあれもこれもやりたくなるものですが、まずは中心にありシンボルとなるもの、すなわちシャンパンタワーの一番上にあるグラスに集中することが大事です。
さて、あなたのビジネスにおける「湯畑」は何でしょうか?