以前、神社には「社格」というランク分けが存在していましたよ、というお話をしました(コチラ)。
「官社」「民社」「官幣社」「国弊社」など様々な名称があるのですが、残念ながらこれらの社格制度は戦後GHQの神道指令により廃止されてしまいました。
そのため、現在これらの名称はあまりメジャーではなく、その代わりと言ってはなんですが「一宮(いちのみや)」という社格の方がメジャーかもしれません。
現在、一宮は各都道府県を代表する神社として信仰対象になっていますが、もともとは各国(地方)で最も重要な神社に与えられた称号となり、「一の宮」「一之宮」と書くこともあります。
この下に「二宮」を置き(嵐じゃないですよ)、地域によっては「三宮」以下を設置しました。
「総社」と呼ばれる神社もありますが、これは重要な神々を一ヶ所に集めた神社のことを指します。
成立時期は不明ですが、各地の神社が信仰を集めるうちに自然とできたという説が有力です。
11世紀頃には地方に定着し、現在の知事に相当する国司や、政務を担った在庁官人の間で信仰されたそうです。
※文献上、初めて出てくるのは12世紀前半に成立したという『今昔物語』です
そのため、一宮に祀られる神様が国司たちの氏神になるケースも少なくなかったそうです。
そんな重要な神社である一宮ですが、実は時代によっては一宮が交代し、式内社制度下では社格が下の神社が一宮を名乗ることも珍しくありませんでした。
さらには、複数の神社が一宮となった地域もあるぐらいで、必ずしも明確な基準があったわけではないようです。
例えば筑前国では「住吉神社」と「筥崎宮(はこざきぐう)」がそれぞれ一宮を名乗っています。
どうして複数存在するのかについては、複数の神社が一つの神社とみなされているケースや、時の権力者が肩入れしたケースなどもありますが、大半は理由がよく分からないそうです。
なお、ほとんどの一宮は江戸時代までに決まっているのですが、明治時代以降に新しく一宮に認定された神社もあります。
これらは、全国の一宮で構成された「全国一宮会」主導で決められたものになります。
北海道の一宮もこの流れで設けられており、当然北海道の一宮は北海道神宮となります。
ただ、北海道は大きいので、「全国一宮会」非加盟ではありますが、北海道神宮以外にも以下のような一宮が存在しています。
○渡島国:徳山大神宮、姥神大神宮
○石狩国:岩見沢神社
○北見国:網走神社
○十勝国:十勝神社
○釧路国:厳島神社
この他にも琴似神社も「屯田一宮」を称していますが、これは屯田兵村の一宮を意味しています。
これを踏まえて神社巡りをするとより楽しめるのではないでしょうか。
↑埼玉県にある武蔵一宮氷川神社。明治天皇が行幸された由緒ある神社です。