先日の『カンブリア宮殿』で味噌メーカーのマルコメが取り上げられていました。

マルコメは160年以上続く老舗企業ですが、始まりは地方の小さなイチ味噌メーカーでした。

それが現在社員400名を超える業界トップの大企業になったのには、ある転機がありました。

それは現社長の先代であり現会長である青木佐太郎さんの存在です。

根っからの新しいもの好きな佐太郎さんは次々と味噌業界の常識や慣習を破っていきます。

例えば昔は味噌は樽に入れて出荷していましたが、回収や補修が大変でした。

そこで佐太郎さんは段ボールに入れて出荷することで使い捨てOKにしました。

ただ、他の同業者もすぐに真似をします。

しかし、佐太郎さんは次々と新商品を開発していきます。

ビニール入りのものやプラスチック容器入りのものなどの新商品を矢継ぎ早に投入し、常にライバルの一歩先を行っていました。

そんな中、ある若い主婦から1通の手紙が届きます。

「おたくの味噌で味噌汁を作ったけど全然おいしくなかった」といういわゆるクレームです。

それを読んだ社員がその主婦に電話をしてみると意外な事実が。

「お客様はどうやって味噌汁を作られたんですか?」

「普通に味噌をお湯に溶かして作りましたけど」

「ちなみにだしは何でとられましたか?」

「え?だしをとるの?」

”味噌汁はだしをとって作る”という常識を知らない人が増えていたのです。

それを当時社長だった佐太郎さんが報告を受けると、あるアイデアを思いつきます。

「それならだしの入った味噌をつくろう!」

それを社内会議で提案してみると大反対の嵐!

当時の業界では味噌に出しを入れるというのはタブーでしたし、そんなことをしたら「マルコメはいい味噌が作れないからだしを入れてごまかしている」と同業者から馬鹿にされると、なんと社員の8割は反対したのです。

普通ならそこまでみんなが反対するなら諦めるところですが、佐太郎さんは違いました。

「そんなに反対が多いのか・・・。全員が賛成するような商品ではむしろうまくいかない。よし、やるぞ!」とだし入り味噌の開発に着手します。

試行錯誤の末に開発に成功し、発売してみると、その手軽さから異例の大ヒット!

さらには他の商品もすべてだし入りのものにして、生産ラインもそのためのものに刷新。

この大ヒットにより、業界トップの味噌メーカーへと躍進したのです。

さて、ビジネス書などを読むと「みんなが賛成するようなアイデアは凡庸なものだ。みんなが反対するようなアイデアの中に成功の種が眠っている」といったような表現がよく出てきます。

佐太郎さんはまさにこれを地で行ったわけですが、しかし、これは分かっていても実行するのはなかなか難しいかもしれません。

みんなが反対するし実際に大コケするアイデアもありますからね。

でも「だし入り味噌」のように当たれば大ヒット!ということもありますから、反対の声に負けずにチャレンジすることも大切ですね。