2023年10月から消費税のインボイス制度がスタートする予定ですが、それに先駆けて適格請求書発行事業者になるための登録申請が2021年10月より受付スタートとなっています。
この「適格請求書発行事業者」とは超ざっくり説明すると「私に支払った消費税はあなたの消費税を計算する際に控除することができますよ」ということになります。
逆に言うと、2023年10月以降、何か商品やサービスに対してお金を払う際に、その相手が「適格請求書発行事業者」でなければ、その支払った消費税は控除できなくなるので、国に納める消費税が増えるということになります。
そして「適格請求書発行事業者」は消費税の課税事業者しかなることができません。
これも超ざっくりと説明すると、年間の売上高が1,000万円以下だと消費税の納税が免除される免税事業者となり、それは2023年10月以降も変わらないのですが、ただ免税事業者のままだと適格請求書発行事業者にはなれません。
以上を踏まえまして、先日クラウド会計ソフトを提供するfreeeが5月に企業の経理・財務担当者を対象に行ったアンケートによると、取引先に対して課税事業者への転換を依頼済み又は依頼予定の事業者が半数を超えたそうです。
特に企業規模が大きいほどその傾向にあり、大企業では「すでに依頼を行っている」「まだ行っていないが、今後行う予定」を合わせると約7割になります。
企業規模が小さくなるとその割合が低くはなりますが、まだこの制度が浸透していないので分からないだけという可能性も高く、今後理解が進むと課税事業者への転換を依頼するケースが増えることが予想されます。
一応制度上は激変緩和措置として2023年10月から即免税事業者に対する消費税の支払いが100%控除できなくなるのではなく、段階を追って少しずつ控除できなくなるようにはなっていますが、割りと多くの企業が2023年10月から免税事業者との取引をやめるのではないでしょうか。
または「免税事業者のままだとおたくに支払う消費税が控除されなくなるから、そのぶん支払額を減額させてもらう」という話も出てくるかもしれません。
場合によっては請求書の中に適格請求書とそうでないものが混在すると経理処理も煩雑になるので、作業効率という観点から全ての取引を適格請求書発行事業者に統一するということも考えられます。
ということで現在免税事業者の方には適格請求書発行事業者つまり課税事業者に転換するか免税事業者のままでいるかの選択が迫られることになります。
課税事業者になれば取引は継続するでしょうが、新たに消費税の納税という大きな負担が発生することになります。
しかし消費税を納めたくないからと免税事業者のままでいると取引が打ち切られて大幅な売上減となるおそれもあります。
適格請求書発行事業者の登録申請書は原則として2023年5月31日が提出期限となります。
それまでの間に課税事業者になるのかならないのかを決める必要があります。
なかなか悩ましい問題ではありますが、放置することなく決断していただきたいと思います。