ここ最近パワハラ防止法に関連する記事を多く書いていますが、実は結構興味深いテーマだと感じています。

例えば頻繁に遅刻をする、何度注意しても同じミスを繰り返す、仕事をサボる、といった問題行動を起こす社員・部下などに対して、腹が立ったとしても殴ったり物を投げつけたり、「バカ!」「給料泥棒!クビだ!」と言った言葉を浴びせるといった行為はパワハラでありNGです。

それでもほんの十数年前まではそのような会社は当たり前のようにありましたし、今でも有名企業の社長が社員を罵倒する音声データが公開されてパワハラ行為が明らかになるなど、残念ながらまだまだこういった「THE・パワハラ行為」は無くなっていないようです。

とは言えそういったパワハラ体質の会社はごく一部。

多くの企業はパワハラは良くないことだと認識した上で、ではどうすれば上記のような問題社員に対して適切な指導が行えるかに腐心しているのではないかと思います。

パワハラ防止法ではいくつかの具体的な対応を義務化していますが、その中の1つが「事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発」というものです。

これはつまりパワハラの内容やパワハラを行ってはいけないという方針を明確にし、社員に周知・啓発するということになるのですが、一番分かりやすいのは社内研修です。

当事務所ではクライアントに対して個別にパワハラに関する社内研修会を実施しています。

研修は一方的に話を聞いてもらうだけでなく、事例について考えてもらう時間も設けているのですが、何度か実施するなかで興味深い傾向を発見しました。

何か問題行動を起こした社員に対してこのような声がけをするのはパワハラに該当するかしないか?といういくつかの事例について考えてもらうワークがあります。

ここで経営者は「いや~、私はどれもパワハラに該当しないと思うな」と回答するのに対して、社員の側は「私はこれとこれとこれはパワハラに該当すると思います」と回答する傾向にあります。

実際にそれが正解かどうかはさておき、研修で一通りパワハラの定義について学んだ後でも、パワハラの判断基準が経営者と社員とで異なる傾向にあるという点です。

ここで改めて先程の「どうすれば問題社員に対して適切な指導が行えるか」ということについて考えてみたいと思いますが、まずは経営者や管理者と社員とのパワハラの判断基準を揃えることが大前提だと思います。

経営者や管理者などが「これは適切な指導だ」と思っていて、かつ、客観的に見ても適切な指導と認められるものだとしても、指導を受けた側が「不快に感じて傷ついた。だからパワハラだ!」と騒ぎ立ててしまうと、指導した側に非がなくても適切な指導がやりにくい雰囲気となってしまいます。

結果として問題社員に対して何も言えないようになり、遅刻や同じミスの繰り返し、仕事をサボるといった行為が野放しとなってしまいます。

そうするとまじめに仕事をしている社員はバカらしくなって、同じような問題行動を起こすようになる可能性があります。

こうなってしまうと学校崩壊ならぬ会社崩壊です。

これは極端な話かもしれませんが、でもパワハラ防止法に関係なく、「うちの社員にはもうちょっとモチベーション高く仕事をして欲しいんだけどな~」と思っていても何も言えずモヤモヤしている経営者も多いのではないでしょうか?

冒頭興味深いテーマだと言ったのは、このパワハラ問題というのは職場から恐れをなくすという点から出発して、どうやって社員にモチベーション高く仕事をしてもらうかということに繋がっているからです。

私は法律の専門家として、今回のようなパワハラの研修を実施したり規程を整備したりといったサポートはもちろん行ないますが、それだけでなくどうすれば働きやすい職場環境を整備し、生産性・収益性の高い組織を作ることができるのかという点でもサポートしていきたいと思います。