先月、M&A仲介最大手である日本M&Aセンターによる不正会計が明らかになりました。
具体的には成約前の仲介業務の契約書の写しを偽造するなどして売り上げを前倒し計上する不正が過去5年間で83件あったということです。
昨年12月から調査を開始した調査委員会の報告書によると、売上至上主義的な経営のもと、営業マンに強力なプレッシャーがかかり、「ノルマを達成するためにやむを得ず」不正を行なってしまったようです。
さて、M&A市場は現在かなり注目されています。
経営者の高齢化や後継者不足などにより、「自社を買ってくれる会社はないか」という売り手の思惑と、
「優良企業を買収することで、経営基盤をより強固なものにしたい」という買い手の思惑に加えて、
成長市場に続々と参入している仲介業者の思惑も加わっています。
その結果、今や仲介会社はかなりの件数となり、激しい競争を繰り広げています。
日本M&Aセンターは最大手ということでいわば後発組にシェアを奪われる立場にあります。
そこに経営トップが「とにかく売り上げをあげてこい!」という強いメッセージを発してしまえば、手段を選ばず今回のように不正をしてでも何とかノルマを達成しようという人が出てきてもおかしくありません。
過去に何度か言及していますが、売上をあげることを目的としてしまうと、お客に不利な契約を取ってしまったり、不正な会計をしたりとどこかにひずみが生じてしまいます。
会社にとって売上があがることは事業を継続する上で必要なことではありますが、売上をあげることを最優先目的にしてしまうと確実におかしなことになってしまうというよい事例だと思います。
また、M&Aの仲介を行うのに特に資格は必要なく、誰でもできることからトラブルも増加傾向にあります。
聞いた話では、事前の根回しが不十分だったため、M&Aが成立し取引先にその旨を報告したところ、最大手の取引先から「そんな話は聞いてない。社長が違う人になるならうちはもう取り引きしない」と言われてしまい、M&Aをした意味が全く無くなってしまったなんていうトラブル報告もあるようです。
おそらくしばらくの間は仲介会社は玉石混交の状態が続くと思われます。
よほどの会社でない限り、会社を売ったり買ったりする機会はそうそうないかと思いますので、業者選びも難しいことでしょう。
ですが、下手な業者に依頼してしまうと、上記の事例のように最悪な結果となりかねません。
顧問税理士が信頼できる業者を知らないかどうか、ぜひ聞いてみてください。