さて来年度の税制改正に向けた動きが本格的となってきましたが、自民党の宮沢洋一税制調査会長の発言はかなり違和感のあるものでした。

①賃上げ税制について

賃金をアップしたことによる税額控除の対象には賞与は含めず、あくまでも基本給の引き上げ部分が対象になるそうですが、なぜ賞与は含めないのでしょうか?

この賃上げ税制というのは労働者の収入を引き上げることでもっと経済を回そうという趣旨なわけですから、その出どころが給与であろうが賞与であろうが変わらないはず。

特に給与は一度上げたらそう簡単には下げられません。

さらに給与の引き上げに伴って社会保険料の会社負担額も増えてしまいます。

そういうことを言っていて、「よし、税額控除を受けるために基本給を引き上げよう!」と考える経営者はいないと思います。

②住宅ローン控除について

住宅ローン控除の控除率について、現行の1%から0.7%に引き下げる案があるそうですが、その理由は「現実には0.4%ぐらいで借りる人が多いので益税になっているから」というものです。

まずこの利率0,4%というのはミニマムの数字であり、実際にこの利率で住宅ローンを組んでいる人がそんなにいるとは思えません。

さらにそもそも論で言うと、住宅ローン控除というのは利息を補填する意味合いではなく、マイホームを購入してくれるとそれに付随して家具やら何やらも購入し経済に貢献するからそのインセンティブとして設けられたもののはずです。

と考えれば益税という表現は的はずれなものに感じます。

③消費税の引き上げについて

これはさすがにいきなり来年行われるものではありませんが、将来の可能性について大いに有り得るとのことです。

岸田内閣は「成長と分配の好循環」をスローガンに掲げていますが、その意味するところは「まずはしっかりと稼げるようになり、そして稼いだらそのぶん、社会的弱者に分配しましょう」というものです。

しかし消費税というのはどんな所得レベルの人にも定率で課せられるものです。

消費税は社会保障費に充てるということですが、そうすると消費税率の引き上げは「成長と分配の好循環」とは相反するように思えるのですがいかがでしょうか?

ということで、税制改正については議論が始まったばかりの段階ですが、早くも論点がズレていると感じるような内容で、年末に発表される税制改正大綱も正直期待できるものではありません。

数は少なくても、「これは素晴らしい!」と思えるような改正が盛り込まれることを望むばかりです。