11月7日付けの産経新聞に『確定申告「違法状態」40年以上放置か 国税庁、明細書の書式作成せず』という記事が掲載されました。
今回問題となったのは、中小企業の連鎖倒産を防ぐための「経営セーフティ共済」です。
加入する中小企業や個人事業主は取引先が倒産した場合、掛け金の10倍以内で貸し付けが受けられる制度で、掛け金は全額経費としての計上が認められています。
個人事業主の場合、確定申告時に掛け金の明細書を添付するように租税特別措置法に明記されていますが、そもそも国税庁がこの明細書の書式を作成していませんでした。
国税庁が用意していない書式をわざわざ自分で作成して添付するという納税者も少なく、結果として法律で定められているにも関わらず、明細書を添付せずに経費計上するという「違法状態」が放置されていたというわけです。
その実態を会計検査院に指摘されたことを受け、今年6月に国税庁は明細書の書式を作成し、確定申告時の添付を周知する通達をホームページに掲載しました。
ということで、2021年分の確定申告からはこの明細書を添付しなければ、掛け金の経費計上は認められなくなる可能性が高くなりますのでご注意ください。
さて、この産経新聞のネット記事に対して「そもそも制度が複雑すぎる」というコメントが多く寄せられました。
実際この経営セーフティ共済の明細書添付のことに限らず、税法は非常に複雑です。
経営セーフティ共済の掛け金が経費計上できるというのは租税特別措置法で定められているのですが、この措置法で定められている優遇措置というのはどのぐらいの利用度合いなのかを国が把握するために明細書の添付が求められています。
でも国税庁が今回新たに用意した書式を見ましても、かなりシンプルで経営セーフティ共済の名称と、いくら掛け金を支払ったのかを記載する程度の内容です。
ぶっちゃけこの程度の内容のものであればわざわざ作成して添付しなくてもいいんじゃないの?と思ってしまいます。
でもそんな一見して大したことがないような書類を添付しなかったからというだけで経費として認められずに追徴課税を受けてしまうかもしれないのです。
なんと馬鹿らしい話でしょう。
今後デジタル化を推進していくのであれば、まずはこういう細かいことについて精査する必要があるのではないでしょうか?
制度が複雑なままデジタル化を進めようとしても結局は「複雑なデジタル化」ということになってしまい、誰も使いこなせないということになりかねません。
特に我が国の税法は、理念もなくつぎはぎだらけで複雑怪奇なものになってしまいましたので、このデジタル化の流れの中で大鉈を振るう必要があると思います。