国税庁の発表によると2020年度末の国税の滞納額の残高が前年度比9.7%増の8,286億円にのぼるそうです。

22年ぶりに増加したということですが、国税庁によると「新型コロナウィルス対策の納税猶予特例制度に関する事務を優先し、電話での督促や差し押さえなどの滞納整理業務を抑制したため」とのこと。

ちなみに上記金額にはこの「新型コロナウィルス対策の納税猶予特例制度」によって納税を猶予された分はカウントされていませんが、この特例を適用した件数は約32万件、金額にしてなんと1兆5176億円にものぼるそうです。

仮にこの分も加算すると2兆3462億円が滞納+猶予されているということになりますが、そうなると滞納額が大きかった約20年前の水準に近いものとなります。

※ちなみに一番滞納額が多かったのは平成10年度の2兆8149億円となります。

さて、増加したということももちろん気になるのですが、もっと気になるのはこの構成割合です。

 

前年度末の残高及び割合は以下の通りです。

申告所得税 2,238億円(29.6%)

源泉所得税 1,090億円(14.4%)

法人税     946億円(12.5%)

相続税    572億円( 7.6%)

消費税   2,668億円(35.3%)

その他     41億円( 0.6%)

合計    7,554億円

 

それが2020年度末にはこう変わります。

申告所得税 2,288億円(27.6%)

源泉所得税 1,054億円(12.7%)

法人税   1,081億円(13.1%)

相続税    561億円( 6.8%)

消費税   3,245億円(39.2%)

その他     57億円( 0.6%)

合計    8,286億円

 

お分かりいただけると思いますが消費税の滞納額が一気に増え、かつ割合も一気に増えて、滞納額の約4割が消費税という状況になってしまいました。

消費税は平成元年に導入されますが、その後一気に滞納額が増えていきます。

というのも、消費税は「預り金」的性格の税金なのですが、導入当初はあまりそういった性質の税金に経営者が慣れておらず、そのぶん手元にキャッシュがあるとついつい使ってしまう経営者が多く、決算の時に「はい、消費税を納めてください」と言われても「お金が無い!」となってしまったからです。

しかし、今回滞納額が増えたのは単純にそういう話だけではなく、やはり税率の引き上げとコロナのダブルパンチが原因でしょう。

税率を10%に引き上げたタイミングでやってきたコロナ禍により一気に資金繰りが厳しくなり、しかも納税猶予の手続きをしなかった事業者が多かったため滞納額が増えたものと推察されます。

消費税は赤字でも発生する税金ですし、滞納金は黒字(厳密にはキャッシュフローがプラス)にならないと支払えません。

コロナ禍で経営状況が厳しい企業が増えている中では今後もさらに滞納額が増えていくことが予想されます。

とにかく税金のことを全く考えずに資金繰りを考えると、納税の段階で「そんなお金は無い!」となってしまいますから、顧問税理士と連携して滞納しないようにマネジメントしましょう。