以前ご紹介した横須賀輝尚さんの著書『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』の中に【「先生」という曲者呼称】というパートがあります。
税理士に限らず弁護士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士、行政書士など「士」のつく国家資格取得者について何となく「先生と呼ばないといけない」というイメージがあるような気がします。
私も税理士試験に合格し、独立開業した当初、かなり違和感があったのが「先生」と呼ばれることでした。
辞書によると「先生」というのは、
1.学問や技術を教える人。特に学校の教師
2.教師・師匠・医師・代議士など学識のある人や指導的立場にある人を敬っていう語
3.自分よりも先に生まれた人
というような意味があるようで、そう考えると「士業」は2の「指導的立場にある人」に該当するので先生と呼ばれるようになったと推測されます。
しかし私自身は「先生」と呼んでほしくないと思っています。
理由は様々ありますが、主な理由は「先生と呼ばれると勘違いするから」です。
横須賀さんが「曲者呼称」と表現しているのは言い得て妙だと思うのですが、「先生」とか「社長」とか呼ばれると、何か自分は偉い人間なんだ、特別な人間なんだと勘違いしてしまう人が出てきてもおかしくありません。
私もまだまだ未熟な人間なので、「先生!」「先生!」と呼ばれ続けると勘違いしてしまうかもしれません。
そんな戒めの意味も込めて、クライアントには「先生と呼ばなくて大丈夫です」とお伝えしています。
また、クライアントにも「あなた、『先生』なんだからなんでもできるんだろう!」という間違った解釈をしてほしくないという思いもあります。
「税理士【先生】なんだから、どんなにヤバい会計処理をしていても税務調査の時になんとかしてくれるはずだ」
「税理士【先生】なんだから、ウルトラCの節税方法を提案して然るべきだ」
もちろん、そんな都合の良い話はありません。
「先生」と呼んでくれればウルトラCが発動するということでしたら、いくらでも「先生」と呼んでいただいて構わないのですが、残念ながらそんな都合の良いシステムにはなっていないもので。
自分が勘違いしないためにも、そしてクライアントが勘違いしないためにも、今後もぜひ「先生」と呼ばないようにお願いしたいと思います。
ちなみに、前述の横須賀さんの著書には
”執拗に「先生と呼ばないでください」という層も一定数存在します。(中略)ただ、その理由が「自信のなさ」から来ているものであるとすれば、その士業には依頼すべきではないでしょう。”
という記載がありますが、私の場合はそうではありませんので、ぜひとも安心してご依頼ください。
最後に一句。
「先生と 言われるほどの 馬鹿でなし」