電通が一部の正社員を業務委託契約に切り替え、「個人事業主」として働いてもらう制度を2021年1月からスタートさせるというニュースが話題を呼んでいます。
11月11日付けの日本経済新聞によると
”電通では副業を禁止しているが、新制度の適用を受けると兼業や起業が可能になる。
他社での仕事を通じて得られたアイデアなどを新規事業の創出に生かしてもらう考えだ。”
”契約期間は10年間。電通時代の給与を基にした固定報酬のほか、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティブも支払われる。”
”適用者は電通社内の複数部署の仕事をするほか、他社と業務委託契約を結ぶこともできる。
ただ競合他社との業務は禁止する。”
ということだそうです。
このニュースについて世間では賛否両論、というか「リストラ回避の偽装請負では?」という批判的な声が大多数を占めています。
電通と言えば数年前に女性社員が過労を苦に自ら命を絶つという痛ましい事件がありましたが、「ブラック企業」として認識されてしまっている会社なので、このような批判もある意味仕方のないところなのかな、とも思います。
それはさておき、今後もこのように雇用契約ではなく業務委託契約を選択する企業は間違いなく増えると考えられます。
今回のコロナ禍で売上が減少した会社にとって人件費の負担は重く、航空業界では「冬のボーナスゼロ」「副業OK」「他社への出向要請」などでなんとか対応しようとしています。
また、みずほフィナンシャルグループでは週休3日や週休4日の働き方を認める方向です。
昨年トヨタ自動車の豊田章男社長が「終身雇用を守るのは難しい」と発言したことが大きく取り上げられましたが、コロナ禍もあって、企業と働く人との関係性は急速に変化しようとしています。
終身雇用はおろか、生活に必要なお給料を全額支払うのも難しいので、不足分は副業するなりして自分で稼いでね、というのが最近のトレンドと言えます。
ある意味、その究極の姿が完全業務委託契約です。
雇用契約ではないので、給料を保証する必要はありませんし、賃上げも不要。さらに社会保険の会社負担分も無くなります。
また、雇用契約であれば多少仕事ができない程度であれば簡単に解雇することはできませんが、業務委託契約であれば、「仕事ができない」と判断されれば契約解除も可能です(契約内容によりますが)。
「会社と働く人との関係は業務委託契約。仕事ができる人であればインセンティブという形で上乗せして報酬を受け取ることができるが、仕事ができない人であれば容赦なく契約解除される」
という超実力主義の時代へと突入しつつあると言えるでしょう。
もちろん、過去に単に会社の社会保険の負担を減らす目的で、実態としては雇用契約と変わらないのに業務委託契約に切り替えるという偽装請負が問題となりましたが、それはあってはなりません。
しかし、今後キチンと要件を満たす形で追従する企業が増えるようでしたら、いわゆる「サラリーマン」はドンドン減り、そのぶん個人事業主が増えていくことになります。
とりあえずオフィスに出社し、決められた就労時間にそこにいれば最低限のお給料が貰えるという世界はそこにはありません。
もともと叫ばれていた「働き方改革」とは大きく異なる方向で、急速に「働き方改革」が進んでいます。
企業の側にも、働く人の側にもその変化に対応する準備はできていますでしょうか?