10月6日放送のガイアの夜明けは「”大戸屋”買収劇の真相~人気定食チェーンはなぜ狙われたのか?~」というテーマで、世間を賑わせたコロワイドによる大戸屋の買収劇を取り上げていましたが、まぁこれが先日まで放送されていたドラマ「半沢直樹」を地でいくような内容で、非常に興味深いものでした。
大戸屋は戦後の大衆食堂から始まり、その後創業一族である三森久実氏が打ち出した「店内で調理した手作りの定食をリーズナブルな料金で」というコンセプトが当たり、海外も含めた約120店舗を展開する大手チェーン店となりました。
しかし近年は人件費や材料費など高コスト構造の改革が進まずたびたび値上げをするも赤字に苦しんでいました。
実際、私も昔はちょくちょく通っていたのですが、最近はあまり行かなくなりました。
シンプルに「ちょっと高いな」と感じてしまうんですよね。
そんな大戸屋に対して大株主である外食チェーン大手のコロワイドが店内調理ではなくセントラルキッチンの活用により、コストをかけずにリーズナブルに提供できると提案しますが、これに従わない場合には経営陣の刷新を求めるという大戸屋にとってはかなり衝撃的な内容でした。
それに対して若くして亡くなられた三森氏の跡を継いだ窪田社長は「店内調理は我が社のこだわりであり捨てるわけにはいかない」と徹底抗戦します。
戦いの場は株主総会となりますが、結局そこでは過半数の賛成を得ることができなかったためコロワイドの提案は否決されました。
総会を終えた窪田社長の目からは涙が。
会社が大変な状況なのは変わらないけど、良かったね社長。
と、視聴者が思っていたところに、思わぬ展開が待ち構えます。
今度はコロワイドが株式の公開買い付け(TOB)、いわゆる敵対的買収に動きます。
大戸屋は6割以上が個人株主のため、その個人株主に「うちにあなたが持っている株を売りませんか?」と働きかけたわけです。
さて、先ほどの株主提案では過半数の賛成を得ることができなかったコロワイドに勝算はあるのでしょうか?
結果としてコロワイドのTOBは成功し、実質的に経営権を握ることになります。
これにより、窪田社長を含めた経営陣は会社を追われ、新たな経営陣が送り込まれることに。
あぁ、株主総会を乗り切って涙を浮かべていた窪田社長、ここで強制退場なのか・・・と同情しかけたところに新たな展開が。
コロワイドが送り込んだ新経営陣の中に故・三森久実氏の長男・三森智仁さんの名前があるではありませんか。
実は智仁さんは大戸屋の役員になっていましたが、父親である久実氏の死去に伴うお家騒動の結果、窪田社長により大戸屋を追い出されていたという過去を持ちます。
その後ベンチャー企業を立ち上げご自身でビジネスをしていましたが、久実氏の死去によって取得した大戸屋の株式にかかる相続税約10億円の納税に困り銀行からの融資を受けていました。
設備投資のための借金でなく税金を払うための借金で10億円ですから、これはかなりの負担です。
そんな中、コロワイド社から株式を買い取りますよという打診を受け、約30億円で売却、これにより借金を綺麗に返済することができます。
そしてコロワイドは一気に大戸屋の株式の約20%を取得し筆頭株主になったというわけです。
智仁さんは大戸屋を去った後も毎日のように大戸屋に通いほとんどの定食を食べているので、課題もよく見えています。
大戸屋に戻っても社長ではなく取締役という立場にはなりますが、大戸屋を立て直すにあたってこの上ない人選と言えます。
という、まぁドラマを上回るドラマティックな展開ですが、1点気になることがあります。
今回買収に成功したコロワイドですが、会長の蔵人金男(くろうどかねお)氏がかなりの豪腕派ということです。
過去に社内報に
「コロワイドが、レインズを買収して5年。未だに挨拶すら出来ない馬鹿が多すぎる。」
「個人的に張り倒した輩が何人もいる。」
「所詮、コロワイドが買収した会社」
「生殺与奪の権は、私が握っている。さあ、今後どうする。どう生きて行くアホ共よ。」
と書いちゃうようなタイプの経営者です。
買収した会社の経営を立て直しているので素晴らしい経営手腕をお持ちだとは思うのですが、自分の会社の社員を「アホ共」と言っちゃうようなボスの下で喜んで働きたいと思うのか?
これは今後もしばらくは大戸屋から目が離せません。