「菅義偉内閣」が誕生しましたが、なんと言っても目玉政策は「デジタル庁」です。
今まで何度も取り上げてきたように行政手続きのデジタル化、オンライン化というのはぶっちゃけ今までは「なんちゃって」なものでした。
10万円が支給された特別定額給付金は郵送の他にオンラインでも申請手続きができましたが、オンラインで申請しても各自治体側はオンラインデータのままでは処理できず、一度プリントアウトする必要があることから、かえって作業が煩雑になり、オンライン手続きをストップし郵送するようにアナウンスするというなんともお粗末な仕組みが露呈してしまいました。
これについてデジタル庁担当の平井卓也大臣は「なんちゃってデジタル化は何の意味もないので、そこは是正しなくてはならない」とおっしゃっているので、大いに期待したいと思います。
また、税務の手続きや労務の手続きについて、現在かなりのものがオンラインに対応しているのですが、一部対応していないものもあります。
先日税務署から電話連絡が入り、
「関与先である納税者について書類を提出して欲しい。でもオンラインでは対応していないのでその納税者のハンコを押した紙の書類を郵送して欲しい」
という話でした。
「その納税者とはしばらく会うことがないので、ハンコが必要なら提出するまで結構時間かかりますけど?」
と返したところ
「であれば、納税者と税理士先生の連名で書類を作成して、先生の方のハンコを押して提出してくれれば結構です」
という返答でした(嫌がらせをしたわけじゃなく実際滅多に会わないクライアントだったので)。
もうそのハンコにどれだけの意味があるんでしょう?
これについては河野大臣が「行政手続きで印鑑使用を原則廃止に」とおっしゃっており、その実現を強く望むところです。
オンラインに対応していないあまり正式でない謎の書類はゼロにして欲しいですね。
さて、デジタル庁の創設について国民の約8割が賛成しているというデータもあるのですが、中にはあまり歓迎していない人もいます。
まずは「デジタル化されてもついていけないし、設備投資するのにお金がかかるから嫌だ」というタイプの人です。
特に年配の方に多い傾向にありますが、残念ながらこのデジタル化の流れは止まりません。
そして進化のスピードはかなり速いので、一度この流れに乗るのを拒否してしまうと改めてその流れに乗るのはかなり大変です。
固定電話→PHSや携帯電話→スマートフォンという風に常に流れに乗っていれば感覚でついていける部分もありますが、
極端な話し、糸電話→スマートフォンという風に、途中に断絶があるとスマートフォンを使えるようになるまでかなり苦労するハズです。
もう世間から一定の距離を取って仙人のような生活をするというのなら話は別ですが、少なくともビジネスをしていくのであればこのデジタル化の流れにきちんと乗るというのは経営者の責務と言えるでしょう。
もう一つのパターンは「不正引き出しとかセキュリティの問題もあって危ないから嫌だ」というタイプです。
確かに最近ゆうちょ銀行を筆頭に本人に成りすまして不正に引き出しが行われるなどの問題が発生しています。
デジタル化を推進することによって、このようなサイバー犯罪に巻き込まれる可能性も出てくることでしょう。
この点、デジタル化が進んでいるエストニアやお隣の韓国などではかなりセキュリティ対策がしっかりしています。
ただこれらの国も実際にデジタル化を進めていく中で、サイバー攻撃やデータ改ざんなどの被害が出て、それに対応する形でセキュリティを強化してきた歴史があります。
おそらく我が国でも今後デジタル化を進めていく中で、同じような問題が発生すると思いますが、その時に
「ほら見たことか、デジタル化なんて危ないからやめとけ」
と言っていては進化を止めてしまうことになるので、多少の被害は想定の上で(ただし被害が発生した時の補償はしっかりと担保して)、デジタル化とセキュリティ強化を進めていくべきでしょう。
普通に生活しているとそんなに感じないかもしれませんが、こういう仕事をしているといろんな行政手続きが
・直接その役所に行かないといけない(そして窓口が混んでいる)
・ハンコを押した書類を郵送しないといけない
・FAXしないといけない
・同じような書類をいくつもの役所に提出しないといけない
・オンライン化していても入力方法が煩雑で結局紙に書いた方が早い
という形で不便極まりないということがよく分かります。
ものによっては平日の17時までにその役所に行かないと取得できない書類があるので、わざわざそのために会社を休む、なんて話も聞きますがそんな無駄なことはもうやめたくないですか?
平井大臣は「今回コロナに関連する各種手続きはデジタル敗戦だ」とおっしゃっていましたが、そうやって我が国のデジタル化がダメダメだったことが露呈した今のタイミングこそ大胆な改革ができる絶好のチャンスです。
菅内閣にはぜひともこのチャンスを逃さずに一気にデジタル化を進めて欲しいと思います。
そして、当事務所もそのデジタル化の流れにしっかりと乗り、お客様がより快適に行政手続きができる体制を構築していきたいと思います。