8月13日放送の『カンブリア宮殿』でチョーヤ梅酒株式会社が取り上げられていました。
チョーヤと言えば「さ~らりとした 梅酒」のCMでお馴染みですが、会社名が「チョーヤ梅酒」だったとは知りませんでした(2000年に社名変更)。
チョーヤ梅酒は元々ブドウを栽培してワインを造るワインメーカーとして創業します。
その後、創業者である金銅住太郎氏が60歳になり、会社の経営を息子にバトンタッチをしたタイミングで、かねてより行きたいと思っていたワインの本場フランス・ボルドーに引退旅行に行きます。
そこで衝撃の出来事が!
あるワイン農場を見学させてもらったところ、造っているワインの品質は自分のものよりも圧倒的に高く、さらにコストは自分よりも圧倒的に低いという事実を目の当たりにします。
そこで住太郎氏は
「よし、だったらここで技術を学び試行錯誤して、負けないワインを造るぞ!」
・・・とは思わず、
「今後ワインが自由に輸入されるような時代になれば、我々のような弱小ワインメーカーはひとたまりもない」
と考え、全く新しい商品の開発に着手します。
そこで目を付けたのが、当時多くの家庭で手作りされていた梅酒です。
「家庭で作るあの味をそのまま商品にできれば」
ということで梅酒の開発を始めます。
しかし、多くの家庭で手作りされていたということは、なんで自分で作れるのにわざわざ買わないといけないの?という話しに繋がります。
営業マンが当時のお酒販売のほぼ唯一のチャネルである酒屋さんに商品を置いてもらえるようお願いしても
「そんなの置いても売れん」
と断られてしまいます。
そこで、当時中小零細企業としてはあり得なかったテレビCMを打って知名度アップを図ります。
資金が潤沢にあったわけではないので、稼いだ利益をほとんどつぎ込み、有名人を起用してCMを打ち続けます。
そのうち、核家族化により梅酒を作らない家庭が増えたことにより市場が拡大し、それまで投資してきた認知活動が功を奏し、飛躍を遂げるわけです。
まず、ここまでで、創業者・住太郎氏の凄いところは、
「このままでは事業があぶない」
と判断し、メイン事業の方向転換を図ったという点です。
そして目をつけたのが家庭で手作りされていた梅酒という点です。
なにせ自分で簡単に作れるわけですから、それをわざわざ買おうというニーズはほぼ無いに等しい状況です。
「今後核家族化が進み、必ずニーズは増える」と予測したのかどうかは番組では語られませんでしたが、もしそうだとしたらかなりの先見の明と言えます。
何せ商品開発を始めてから軌道に乗るようになるまで約20年もかかっているわけですからね。
さて、このようにして苦節20年、ようやく売れるようになってめでたし、めでたし・・・となるかというとそんなことはありません。
売れるようになると、当然そこには競合が参入してきて激しい競争が発生します。
中には「酸味料」を使ったものもあったりしますが、これは要は実際には梅を使わない「梅風」「梅酒風」のものです。
しかしその分コストを低くおさえることができることから低価格で売り出され、チョーヤの梅酒はなかなか売れないようになってしまいます。
そこで社員からは
「我々も酸味料を使って対抗しましょう」
という声もあがりますが、住太郎氏の息子である3代目社長・信之氏は
「生き残るためにも競合と同じところに行かない方がいいのではないか?
我々が追求してきた昔ながらの原料、家庭の梅酒にこだわっていかないか」
と、我が道を行くことを選択し、それが消費者に支持され、今に至ります。
創業者・住太郎氏は時代の変化を読んで「変わること」を選択しましたが、3代目・信之氏は時代の変化を読んだ上で、「変わらないこと」を選択しました。
言うまでもなく、現在のコロナ禍というのは大きな時代の変化となります。
度々「ビジネスモデルの転換を図りましょう!」「テレワークで効率化が図られるのであればテレワークを推進しましょう!」と言っているのは、このような時代の変化の波に飲み込まれないように住太郎氏のように「変わること」を選択しましょう!という想いによるものです。
ただし、信之氏のように変えてはいけないこともあります。
「みんながやっているからと言ってそこを変えちゃったらうちの存在意義ってなんなの?」
というのはよくよく考える必要があります。
あなたは時代の変化をどのように読みますか?
その上で、何を変えますか?何を変えませんか?