みなさん、ワークマンをご存知でしょうか?
作業服や安全靴などが並ぶ「職人御用達の作業服専門店」です。
ここ札幌にも何店舗かありますが、基本的には職人さんが利用するようなお店です。
しかし!
それが今や、「安価で高機能なウェアを買うことができる」アウトドアショップとして大人気。
職人さん以外の客層も掴み、コロナ禍でも右肩上がりで業績を伸ばし、なんと店舗数ではあのユニクロを上回ったそうです。
ということを私は2年前ぐらいから、いつもお馴染みの『ガイアの夜明け』や『カンブリア宮殿』などで取り上げられているのを見て知っており、「ワークマンの戦略、マーケティングは凄いな!」と注目していました。
そんなワークマンの経営の仕組みについて書かれた本書『ワークマンはなぜ2倍売れたのか』を読めば、色々と学べるに違いない!
ということで、読んでみたのですが・・・。
ワークマン飛躍の立役者が創業者である土屋嘉雄会長の甥である土屋哲雄専務なのですが、そもそもこの方、超エリートです。
東京大学経済学部を卒業後、三井物産に入社。
以来、商社マンとして世界を飛び回りながら、スタートアップや新規事業を次々と起こし、定年退職後土屋会長に請われてワークマンに入社したという経歴の持ち主です。
う~ん、あぶないあぶない。
私も含めた凡人がこんなスーパーマンみたいな人を安易に真似しようとしたら痛い目に合います。
しかし、考え方は学べるはずです。
まず、先程「店舗数ではユニクロを上回った」と書きましたし、それは事実なのですが、とは言えユニクロと競合しているわけではありません。
土屋専務は入社後に、作業服専門店に留まるのではなく、新業態を開発するという「中期業態変革ビジョン」を打ち立てます。
そこで、どのような業態を開発するのかを考える際に、ポジショニングマップを作成し、現状分析した結果、アパレル市場においてデザイン性が高い分野や高価格帯はすでにレッドオーシャンですが、「高機能・低価格」のポジションがガラ空きのブルーオーシャンだと見抜き、「ここなら勝負できる!」と狙いを定めます。
その上で、基本的に扱う商品は変えずに、ターゲットを職人さんから一般客にシフトするという戦略をとります。
これも戦略マーケティングの基本で、新業態の開発をする際には「既存のお客に別の商品」か「新規のお客に同じ商品」という展開だと成功確率が上がります。
最悪は「新規のお客に別の商品」で、これをやると大コケするおそれがあります。
また、これは土屋会長の時代からの話となりますが、全てをマニュアル化し、誰でも運営できるシステムを確立しているため、仕事が属人化することなく、頑張らなくても成果を出せる仕組みができているというのも素晴らしい点と言えます。
先日ご紹介した勝間さんの本で私が取り上げた部分とも相通じるものがありますが、「頑張るよりも仕組み作り」というのは最近のトレンドではないかと感じている次第です。
さらに余計な仕事はやらないという文化もあり、「仕事が終わったら帰って休んだほうがいい」という考え方のため、歓送迎会といった社内行事や仕入先への接待などは全くしないそうです。
「最近の若い社員は仕事終わりに飲みに誘っても断るから飲みニケーションできないんだよな」と嘆く我々以上の世代の上司も多いと思いますが、この辺の価値観はかなり変わってきていますから、ワークマンのような割り切った姿勢の方がこれからの時代、支持されるのではないでしょうか。
あと、これは参考にするというよりは単純に凄いなと感じた部分になるのですが、フランチャイズ加盟店の扱いが素晴らしいです。
もうとにかくフランチャイズ加盟店を勝たせることを最優先に考え、きちんと利益が出たら、その中から本部としての取り分をいただきますよ、というスタンスで、加盟店としての継続率は驚異の99%です。
コンビニの場合、自分のお店の近くに直営店が作られるとか、クリスマスケーキや恵方巻などのノルマが課されるとか、深夜営業をやめたいと言ってもやめさせてもらえないとか、本部と加盟店が対立する様子をよく見かけます。
私も昔、勤務時代に何件か某コンビニオーナーの担当をさせていただいていましたが、打ち合わせの際にはほぼ毎回本部に対する愚痴を聞かされていたものです。
なので、当時「間違ってもコンビニのFCはやらないし、周りにやりたいという人がいたら全力で止める」と思っていたものですが、本書を読んで「ワークマンならやってもいいかも!」と思ったぐらいです(もちろん自分でやることはないでしょうが)。
本書では他にも
「ワークマンを愛用するブロガーやユーチューバーといったインフルエンサーの意見を聞いて商品を共同開発する」
「単なる新商品説明会ではなく『過酷ファッションショー』と銘打ち、マスコミ取材が殺到する」
「日本初上陸のデカトロンは実は商品内容的に競合しないのに、自ら『西宮戦争』と煽り、日経トレンディヒット予測ランキング1位を獲得」
といったユニークな広報戦略についても語られおり、
「凄い人ってこうやって考えて行動しているんだ」
というのが良く学べます。
真似はできませんが、考えるための引き出しを増やす・考えるトレーニングという観点で、ぜひ経営者には読んで欲しい1冊となります。