6月24日に弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所(以下「ミネルヴァ」)が破産決定を受け、弁護士法人として過去最大の倒産となりました。

ミネルヴァはいわゆる消費者金融会社への過払い金返還請求を多く手掛け、積極的にテレビCMなどを行っていましたのでご存知の方も多いと思います。

今回破産に至った経緯はざっくり言ってしまうと、消費者金融会社から返還を受け本来であれば依頼人に支払われるべき過払い金を、広告費に流用していたということで、負債が51億にも膨らみ資金繰りが回らなくなったというものです(広告を依頼した会社との関係など色々と闇があるようですがここでは触れません)。

私は弁護士ではないので実際のフローは分かりませんが、本来であれば、消費者金融会社から返還を受けた過払い金から報酬を差し引いて速やかに依頼者にお返しするというのがあるべき姿かと思われます。

つまり”預り金”に手を付けてしまったという点でプロとしてあるまじき行為と言えます。

同じく過払い金返還請求を手掛ける大手法律事務所で言うと、弁護士法人アディーレ法律事務所(以下「アディーレ」)が2017年に東京弁護士会から2ヶ月の業務停止処分を受けました。

これは「今月限定で過払い金返還請求の着手金が無料になる!」というキャンペーンを5年近くも行っていたということで消費者庁により景品表示法違反で措置命令が下された際に「日弁連の規定に抵触する。けしからん!」と全国の弁護士会から懲戒請求の申し立てがあったという流れになります。

アディーレの場合は依頼人のお金に手を付けたわけではないので、ミネルヴァと同列で扱うのは適切ではありませんが、その行き過ぎたマーケティングのやり方は問題があると言えます。

なんと言っても法律の専門家が法律違反をするというのは「品位を欠く」と言われても仕方がない部分はあるかと思います。

・・・と、長々と弁護士でもない私がなぜこれらの事例を取り上げたのかというと、これらのニュースに関して多くの気になるコメントを目にしたからです。

それは要約すると、

「弁護士というのは社会的弱者の味方でもある社会インフラとでも言うべき存在なのに、金儲けのことを考えるのはけしからん」

と言うようなものです。

弁護士に限らず、私のような税理士や社労士などの”資格業”というのはある意味社会インフラとでも言うべき存在です。

しかし、霞を食って生きているわけではありませんので、適正な報酬をいただく必要があります。

さらに言えば、そのためには仕事を獲得する必要がありますし、その仕事を獲得するためには広告活動を行う必要もあります。

過払い金返還請求やB型肝炎給付金請求などで前述のミネルヴァ、アディーレなどの法律事務所や司法書士事務所などが広告を打って集客する姿をよく見ますが、このように広告を打って集客するというのは一般企業でも法律事務所でもビジネスを継続する上で当たり前に必要なことです。

社会インフラであり、国にその業務を守られているとは言え、自由競争の原理が働く以上、広告しなくていい・稼がなくていいなんていう悠長なことは言っていられないのです。

もう一つ言うならば、「金儲けイコール悪いこと」という価値観を持つ人があまりにも多いのではないかと思われます。

以前にも「稼ぐことは悪いこと?」という記事を書きましたが(コチラ)、特に弁護士の場合はドラマなどで政治家などと癒着して違法に私服を肥やす悪徳弁護士などが描かれることが多いので、そういうイメージが強いのかもしれませんね(税理士とか社労士はそもそもドラマなどで扱われることがないので・・・)。

もちろん今回の記事はミネルヴァやアディーレがやったことを肯定するもの・擁護するものではありません。

依頼人のお金に手を付けるのは論外、広告を出すのは構わないけどルール違反はダメ。

でも法律家だからと言って金儲けをするのはけしからんという話はおかしな話で、きちんとルールを守った上でお金を稼ぐ分には文句を言われる筋合いはありません。

そしてお金をお支払いいただいた以上はしっかりとした仕事をすることで社会貢献していけば良いのです。

少なくとも私は「ボランティア活動」「慈善活動」として税理士業務、社労士業務を行ってはいませんので、お間違いのないようお願いします。