前回「オンライン化は進むのか?」というタイトルで、コロナを機に各種行政手続きのオンライン化が進むのかどうかという点について書いてみました(コチラ)。
特別定額給付金、持続化給付金、雇用調整助成金などのオンライン申請についてはトラブル続きでトホホな状況ではあります。
また、PCを持っていなかったり使いこなせない高齢者などのIT弱者をどうするのか?という問題ももちろんあります。
しかし、すでに電子申告・電子申請がかなり浸透している税金、登記、社会保険手続きにおいて「非常に便利」と実感していますので(私は登記はできませんが)、
是非ともオンライン化を今まで以上に推進して欲しいと思います。
前回の最後に
”さて、今回の話は割りと大きな話であり、オンライン化が進むかどうかなんて私がコントロールできる話ではありません。
今回このことを話題にあげたのは、今後の展開によって我々法律家の役割・立ち位置が変わってくると予想しているからです。
では、我々にどう影響を与えるのか?
それは次回語ろうと思います。”
と書きました。
一体どう影響するのか?
まず一番大きい影響があるのが「エストニアスタイル」を導入するケースです。
結構有名な話ですが、欧州バルト三国の一国であるエストニアは「超デジタル先進国」であり、行政手続きはあえてオフラインにしている結婚、離婚、不動産登記以外の手続きは全てオンラインで行うことが可能です。
税法も非常にシンプルで、例えば所得税についてはデジタルIDカードの利用によって所得が把握されているので、日本のように自分で計算して申告書を作成して・・・ということは一切不要。
国の方から「あなたの所得と税金はこちらで計算したので、問題なければ承認ボタンを押してください」と案内が来るので、ボタンを押せば申告完了。
簡単すぎるため、税理士の出る幕はありません。
法人税は自分で申告する必要がありますが、やはり税法がシンプルで、自分で計算することが可能なので、記帳代行や税務申告を税理士に依頼する必要はないそうです。
もしも日本がこのレベルを目指すということでしたら、我々法律家の役割・立ち位置は大きく変わります。
記帳代行、書類作成提出代行、税務申告代行などの代行業務はなくなります。
ということは主に代行業務で生計を立てている税理士や社労士、行政書士、司法書士などは一気に仕事を失うことになります。
これはかなりのインパクト。
しかし、法律家以外の人にしてみたら手続きも簡単だし、わざわざ専門家にお金を払わなくてもいいわけですからメリットが大きいスタイルです。
では日本が「エストニアスタイル」を導入するか?となるとそれは結構難しいと思います。
マイナンバーを導入する際に「国に所得などを捕捉されるのは絶対に嫌!」という声がかなり挙がりましたので、日本人の国民性を考えると現実的ではなさそうです。
※私は個人的にはこのスタイルを導入する方が便利なんだけどな~と思います。所得を捕捉されて不都合な事情でもあるのでしょうか?
となると、現実的には紙がデジタルに置き換わるという意味でのオンライン化が推進されると考えられます。
その場合、我々の仕事は減るのか?となるとそんなことはないと思います。
と言うのも、「オンライン化してもそもそも制度が複雑だと自分では手続き出来ないから」です。
例えば2019年10月から相続税も電子申告ができるようになりました。
まさにオンライン化の推進です。
ではこのことにより、相続人の方が自分で相続税の申告をできるようになるのか?となると答えはNoです。
だって相続税の申告なんて素人には難しすぎますもん。
もちろん我々専門家にとっては作業の効率化に繋がるのでオンライン化されることに意味がないわけではありません。
しかし、オンライン化されるからといって仕事がなくなるわけではないわけです。
ということで、今後オンライン化が推進されると仕事の効率化が図られるけど仕事がなくなることはない、という未来予想ができます。
「いや~失業しないで済むぞ、バンザイ、バンザイ」
と思うかと言うとそんなことはなく、ここはおそらく段階を踏んで進化していくのではないかと思います。
第一段階はとりあえず紙からデジタル化へのなんちゃってオンライン化。
そしてオンライン化が十分に浸透したタイミングで、「結局オンライン化しても簡単に手続きできないと意味なくない?」という話になり
第二段階として「手続きのシンプル化」が図られるのではないでしょうか?
この第二段階になるとやはり我々の仕事は少しずつ減っていきます。
そこまで見据えて今のうちにどんな手を打っていくのかを考える長期的視点が求められていると思います。