3月12日放送のカンブリア宮殿は「レジェンドVS外食猛者90分SP~絶品店で苦境の外食を変えろ!」というテーマの90分スペシャル版でした。

特に前半のすかいらーく創業者”外食レジェンド”横川竟(きわむ)氏と「いきなり!ステーキ」のペッパーフードサービス社長・一瀬邦夫氏の対談は見応えがありました。

「いきなり!ステーキ」といえばたびたび取り上げているように、登場当時は「立ち食いスタイルでおいしいステーキをリーズナブルな価格で楽しめる」というコンセプトが受け大流行し、それに伴い出店攻勢を図っていましたが、ここ数年は類似店の乱立もあって客離れが進み、どんどんお店を閉めている状況です。

そんないきなり!ステーキの一瀬社長に対して”外食レジェンド”横川さんの容赦ない連打が繰り広げられます。

「自分が食べたいと思うものをお客も食べたいと思うという発想は会社目線」

「お客にどんな価値を提供したいかではなく、店舗をいくつ出店するとか売上をいくらにするといった目標ありきなのではないか」

「(SNSなどでも話題になった一瀬社長の想いを綴った手紙を店頭に貼り出したことについて)私だったらやりません。こういう想いが表現されたものが商品なので」

それに対して一瀬社長が「いや、私はそうは思わない」といちいち反論するので、見ようによっては業績低迷に苦しんでいるのに、外からのアドバイスに対して全然聞く耳を持たないダメ経営者のような構図になっていて、ちょっとかわいそうに感じてしまいました。

横川さんは「会社目線=これはみんな欲しいものだろう、どうだ!」「お客目線=お客さんが欲しいというニーズに合った商品を提供する」であり、一瀬社長は会社目線、横川さんはお客目線でビジネスをしていると説明していました。

ちょっとカッコよく言えば「会社目線=プロダクトアウト」「お客目線=マーケットイン」となります。

よく言われるように高度経済成長期は大量生産・大量消費の時代で、プロダクトアウトで経済が回っていました。

しかし、現在はもう最低限の生活必需品はほぼ行き渡っているので「どうだ、これ欲しいだろう!」と商品を出しても「う~ん、もう似たようなの持ってるからいらない」と買ってもらえません。

もちろん今の時代でもプロダクトアウトで世界的大ヒットとなった事例として「iPhone」があります。

これはお客目線、市場の声を聞いてニーズを拾っていたら確実に世に出ていなかった商品と言えます。

「なんだ、プロダクトアウトでもヒット商品を生み出すことができるんじゃん」

と思ったあなた。あなたはスティーブ・ジョブスに匹敵するようなアイデアマンでしょうか?

私も含めて多くの人は全く市場のニーズを無視して商品を世に出してもほぼ確実に失敗することでしょう。

※iPhoneも完全なプロダクトアウトによって生まれたものではなくマーケットインの要素もあると言われています。

話は戻りまして、横川さんは今の時代、外食産業で生き残っていくためには「お客目線=マーケットイン」が必要不可欠だとおっしゃっています。

会社目線で合理化を進めると材料費を削減して品質が悪くなり、人件費も削減するので接客サービスも悪くなり、選ばれないお店となってしまいます。

横川さんも番組後半で一瀬社長のフォローをされていましたが、一瀬社長に連打を浴びせているようで、画面の向こう側にいる視聴者に向けて連打を浴びせていた、警告していたのではないかと思います。

飲食店に限らず、全てのビジネスに通じる話ではないでしょうか。