7月11日放送の『カンブリア宮殿』は「ビジネスに永遠はない!変幻自在で挑む大胆サバイバル戦略」というタイトルでヤタローグループ代表の中村伸宏さんを取り上げていましたが、かなり興味深い発言連発で面白かったので、今回取り上げたいと思います。

「大手とは同じ土俵で戦わない」

これがヤタローグループの最重要戦略となります。

もともとはパンメーカーであったヤタローの創業者の目に止まり、婿としてヤタローに入社した中村さんは社長就任後、ドイツ式の製法をウリにしたパン店「シャンボール」を出店します。

当時このようなパン屋さんは珍しく繁盛し、50店舗まで拡大します。

しかし、その後近隣にスーパーやコンビニの出店が加速すると、大手との戦いに敗れ直営店を相次いで閉鎖し、創業以来の赤字に転落することに。

ここで中村さんが行き着いた答えが「大手に勝つのではなく、大手を避けて負ける戦争をしない」というもの。

そこで目をつけたのが、当時下請けで作っていたバウムクーヘンです。

バウムクーヘンは機械化による大量生産が難しいお菓子で、大手が簡単に参入できません。

また、当時の日本に出回っていたのはぱさぱさしたあまり美味しくないものでしたが、試行錯誤の末にしっとりと美味しいバウムクーヘンを開発することに成功し、これが現在年間売上35億円を誇る「治一郎のバウムクーヘン」となります。

しかし実は中村さん、甘い物が苦手。バウムクーヘンもあまり好きじゃないんだとか。

「好きじゃないからこそ長続きしているんです。好きだとのめり込んじゃって『甘い』だの『酸っぱい』だの口を出しちゃう。『おいしい』『まずい』といろいろ注文を出して栄えた菓子店はありません。やはりお客様に問わないと」

ということで、ここは「へ~」ポイントですね。お客様ありきということで徹底したマーケットインと言えます。しかし甘いものが苦手なお菓子屋さんというものが成り立つんだと軽いカルチャーショックは受けましたが(笑)。

また、大手との戦いを避けるという戦略についてですが、「大手の資本・人材・組織のパワーと戦ってはいけない」とおっしゃっていますが、その一方で、「でもいずれは大手もニッチの分野にまで進出してくるので、なるべく大手から遠い場所や手法でやっていくことが大事」ともおっしゃっています。

そう、今の時代、大手も売上をあげるのに苦労していますから、今までだったら無視していたようなニッチな分野にも進出するようになっています。

だから中小企業は単なる「ニッチ戦略」ではなく、大手が簡単には進出できないような「超ニッチ戦略」を取る必要があると言えます。

という戦略を掲げている一方で、頼まれた仕事は何でも引き受けるため、お菓子屋だけでなく、宿泊施設や社員食堂、給食事業、老人福祉センターなどの経営も行っており、結構脈絡のない多角化経営をしていると言えます。

そこで番組ホストの村上龍さんから「選択と集中はどう考えているんですか?」と質問があったのですが、その答えもまた興味深いものでした。

「選択と集中というのは効率と金儲け。利益のための考え方だから嫌い」

「選択と集中」はビジネスの世界では割と一般的に使われる考え方ですが、それを嫌いという経営者は初めて見た気がします。

さらに人材に関する考え方も非常に興味深いものでした。

ヤタローには勤めていた会社の倒産、リストラ、早期退職などを経ての中途採用者が多いのですが、そのような経験を積んだ人というのは百戦錬磨の人材になるという考えを持っています。

逆にいいところ出の新卒者は幼稚園から塾まで両親のお金で勉強したので入社しても同じだと思っていて、育成に時間がかかると嘆いていました。

結局「失敗した人、苦労した人が財産」と明言していましたが、ホント、若い人は頑張らないといけないですね。

ということで、非常に気付きの多い回となりました。

なお、治一郎さんは残念ながら札幌にお店がないのですが、現在東急百貨店の催事に出店していますので、興味のある方は究極のしっとり感を味わえるバウムクーヘンを買ってみてはいかがでしょうか?

今日まで開催中だそうです。

私も早速買いに行って食べてみましたが、本当にしっとりしていて美味しかったですよ。