昨年10月の話になりますが、『カンブリア宮殿』にて六花亭が取り上げられました。

”六花亭亭主”(会長)の小田豊さんは2代目ですが、非常にユニークな経営をされており、とても勉強になりました。

六花亭は元々は札幌千秋庵の帯広支店としてスタートしますが、旧国鉄が仕掛けた「ディスカバージャパン」というキャンペーンで「愛国から幸福ゆき」の切符がブームになったことと、ちょうどそのタイミングで創業者である小田豊四郎さんが作った日本初のホワイトチョコレートが大ヒットしたことで、千秋庵にのれんを返上し、六花亭に社名変更します。

東京のデパートからも物産展へのオファーが殺到しますが、その流れで「東京にお店を出しませんか?」という話に。

ここで豊さんは「やはり男なら東京で勝負したい!」と思うのですが、しかし、父・豊四郎さんの「デキモノと食べ物屋は大きくなったら潰れる」という言葉を思い出し、東京には進出しないと決断します。

今でも六花亭は東京に進出することはなく、東京の人はマルセイバターサンドなどの六花亭の定番お菓子は物産展ぐらいでしか買うことはできませんが、それはこういう事情によるのです。

そして、この決断を機に豊さんは「売上や規模は一切目指さない!」という経営方針を明確にします。

では何を目指しているかというと

「あなたの今日の仕事はたった一人でよい

この店に買いにきてよかったと満足してくださるお客さまを作ることです

六花亭があるおかげでお客さま一人一人が人生は楽しいと喜んでくださることです」

という、要は「ファンを作ること」です。

地元に住んでいるお客さんに支持されないと企業の永続性は考えられない、ということで、様々な施策の判断基準は「これはうちの会社が永続するために必要なことかどうか」としているそうです。

お客さまに満足してもらうためには、それだけのクオリティのあるお菓子を作る必要がありますが、そのお菓子作りは全自動ではなく、手作業の部分もあえて残しています。

そうしなければ「作り手の意思」が商品に反映されないから、という理由からですが、そうなると作り手である社員の質も商品に影響します。

ということで、もちろん社員満足度(ES)向上のための取り組みも半端ありません。

残業ゼロ、有給消化率100%は序の口。

社員6人以上一緒に旅行をしたら20万円を上限に費用の7割を会社が負担する社内旅行制度。

特別な成果を上げた社員を経営陣がもてなす宴に招待し、さらにボーナスとして20万円が支給される「今月の顔(月間賞)」。

月間賞の中から最優秀者にカナダ旅行と100万円が贈られる白藤賞。などなど。

豊さんは「僕は悪平等は嫌いなんです。メリハリをつける」とおっしゃいますが、いいですよね。頑張った人がきちんと報われるというのは。

なぜこのような制度を色々と作っているのかという質問に対して

「従業員1300人くらいの規模だと大家族のようなもの。1人も脱落しないように全員の力を引き出すのが経営者の仕事」と答えていましたが、ここも肝心なポイントですね。

番組の最後に村上龍さんから「孤独を感じることはあるか?」と質問されるのですが、その答えも非常に印象的でした。

「感じることはあります。お金の使い方は経営者が腹を括るしかない。経営とは『お金の使い方』なので、孤独に耐えて意思決定しなければいけない」

以前ジャパネットタカタ創業者の髙田明さんも同じようなことをおっしゃっていましたが、やはり経営者は孤独を感じてしまうものなのですね。

私もそのように孤独を感じる経営者にしっかりと寄りそえる税理士でいたいと改めて感じた次第です。

ということで、昨年10月4日放送のこの回は経営者必見です。見逃した方はオンデマンドなどを活用してぜひご覧いただきたいと思います。