世間一般のイメージとして我々税理士事務所は確定申告時期である2~3月、そして3月決算の申告時期である5月が忙しいというものはあるかと思います。

その事務所のクライアントの構成(個人事業の割合が高いのか、3月決算の法人が多いのか等)によって異なるでしょうが、確かにこの時期は忙しいです。

なので、「1月はその前にちょっとゆっくりできる時期なんでしょ?」と言われることもあるのですが、そんなことはありません。

実は1月の税理士事務所は超忙しいのです。

まずそもそも12月には年末調整という一大イベントがあります。

これは個人事業でも会社でも従業員(役員も含める)がいれば必ず発生するもので、ちょっと段取りをしくじるとやれ「生命保険の控除証明書が見当たらない」とか「前職の源泉徴収票失くした」とかで作業が止まってしまいます。

それでも資料を集めて、年末調整の計算を行い、

「Aさんには○○円、Bさんには××円を還付してください」

と連絡し、できれば源泉所得税の納付書も渡したり郵送できるとひと段落と言えるでしょう。

 

しかし!

年末調整業務はこれで終了ではありません。

この後に「法定調書合計表」を税務署に、「給与支払報告書」を市町村に提出するという作業が待ち構えているのです。

 

まず「給与支払報告書」はイメージ的には年末調整を終えて従業員に渡す源泉徴収票を、その従業員が住んでいる市町村にも提出するものと捉えていただけるといいでしょう。

各市町村はこの報告書を基にして、翌年の住民税を計算しているのです。

 

また、税務署に提出する「法定調書合計表」はこの源泉徴収票のうち、一定の人(ざっくり言うと結構稼いでいる人)の分は税務署が把握しておきたいから提出してね、という趣旨で提出するものになります。

また、従業員だけでなく我々士業の報酬や講師の謝礼金など源泉徴収の対象になるような報酬を誰にいくら支払ったのかというもの(これを「支払調書」と言います)も提出することになります。

その他、例えば個人の大家さんに払っている家賃の明細など、もろもろの書類を添付します。

 

なので、我々としては該当する報酬がないかどうか、該当する家賃の支払いがないかどうか確認を行い資料を作成していくわけです。

税理士報酬は自分のことなので把握できますが、ぽろっと単発で司法書士や弁護士への報酬の支払いがあったりしますので注意が必要です。

 

今は電子申告ができるようになったのでだいぶ楽になりましたが、私がこの業界に入った頃はまだ紙での提出しかありませんでした。

 

源泉徴収票(給与支払報告書)は4枚複写になっている用紙をドットプリンターでガシャガシャと印刷して、まずは両端の耳を外します。

4枚は上2枚が市町村への提出用(市町村へは同じものを2枚提出します)、3枚目が税務署への提出用、そして4枚目が各従業員に渡す源泉徴収票となります。

 

まず4枚目の源泉徴収票はクライアントに渡すので、1枚ずつ切り分けていきます。

3枚目の税務署への提出用は、一定の要件を満たす人のみ該当するので目視で確認して、要・不要を判断します(これが面倒臭い)。

1枚目、2枚目の市町村への提出用は切り分けた上でさらに市町村毎に仕分けしていきます。

会社が札幌にあっても従業員の住所が札幌、石狩、江別、北広島という具合に分かれていればそれぞれに分ける必要があります。

さらに、その市町村毎に、特別徴収該当者と普通徴収(退職者や乙欄適用者等)に仕分けします。

こうして仕分けした上で一番上に総括表を載せてホチキス留めをした上で各市町村に提出します。

これだけでも一仕事です。

 

さらに税務署に提出する支払調書は最初の頃は何と手書きでした。

同じ調書を2枚用意する必要があるのでカーボン用紙を敷いて複写させるという超アナログなやり方を15年前とかにはやっていたわけです。

 

これらの資料をまとめて法定調書合計表にセットして各税務署に提出します。

しかも、代表印を押印する必要がありますので提出前にハンコをもらう必要もあります。

 

これを個人事業、会社関係無く全件やるわけです。

私が以前勤務していた事務所はクライアントが何百件もある大手事務所でしたので、それはそれは大変でした。

今は電子申告で完結するのでかなり楽になりましたが、なにせ提出期限が1月31日と非常にタイトなスケジュールなので、大変なことには変わりがないのです。

 

と、ここまででもいかに1月の税理士事務所が忙しいかが何となくお分かりいただけたのではないかと思いますが、実は同じ1月31日が提出期限のものがもう1つ存在するのです。

それが「償却資産税の申告書」です。

償却資産税というのはあまり馴染みのない税金かもしれませんが、ざっくり言うと「個人事業主や会社が所有している動産にかけられる税金」となります。

そう、不動産に対して固定資産税がかかるというのはご存知かと思いますが、実は動産に対しても税金はかけられるのです(ただし一定金額までは課せられません)。

そして、固定資産税は不動産を購入して登記をすれば市町村の方で勝手に計算してくれますが、動産の方は何を持っているのか市町村は分からないので、こちらから申告をする必要があるのです。

これがまた面倒臭い。

1件1件会計ソフトで確認をして該当するものを購入していないかどうか確認を行います。

しかも、毎月定期的に帳簿を作成しているクライアントでも12月の実績は1月にならないと分からないので、1月31日が提出期限というのは非常にタイトなスケジュールなわけです(個人的にはもうちょっと何とかして欲しいと思っています)。

しかもしかも、12月って結構皆さん大きな買い物をするんですね。歳末バーゲンもあったり、個人事業主だったら「年内に買えば節税になるから」という思惑もあったりしますので。

そして、これまた昔は手書きをして紙で提出をしていました。

その年に増えた資産があれば「増加資産用」の用紙に書き、売却や除却などで減った資産があれば「減少資産用」の用紙に書き、セットして市区町村に提出します。

もちろん、こちらの用紙にも代表印を押印する必要がありますので、提出前にハンコをもらわなくてはなりません。

※今は電子申告できますので、押印は不要です。本当に便利です。

 

というように「法定調書合計表」と「償却資産税申告書」、いずれの書類も提出期限が1月31日ということで、1月の税理士事務所は超忙しいのです。

 

さらに付け加えると、これらの資料の控えや、年末調整用にお預かりした各従業員の申告書(保険料の控除証明書の原本など)を各クライアントに返却するための製本作業も同時に進めていく必要があります。

ここを後回しにしているとあっという間に2月の確定申告がやってきますので。

 

ということで、いかに1月の税理士事務所が忙しいのかお分かりいただけましたでしょうか?

分かっていただいてどうして欲しいのかと言うと、とにかくこれだけやらないといけないことが山ほどあるので、顧問税理士から「この資料ありませんか?」と聞かれたら「最大限迅速に協力して欲しい」のです。

「いや~、なんかどっかいっちゃったな。無いとダメ?」とか「今忙しいから1週間後でもいい?」ではなく、”迅速にマッハで”お願いします。1つでも資料が足りないと完成しませんので。

お互いに気持ち良く仕事をするためにも、優先順位を高めてご対応いただけると幸いです。

 

↑昨年参拝した伊勢神宮の内宮正宮(皇大神宮)