中小企業にとっての「出口戦略」は次の5つしかないと言われています。
①廃業
②倒産
③上場
④事業承継
⑤M&A
このうち①廃業と②倒産は会社を消滅させることとなります。
③は市場から広く資金を調達し上のステージを目指すこととなります。
④は現経営者にとっての出口戦略という意味となります。
⑤は会社の売却を意味します。
このうち②倒産というのは多額の借金を抱えてどうにもならなくなり、法的整理を行うということになりますから、できれば避けたいところです。
③の上場を目指す経営者もいるにはいますが、少数派といったところではないでしょうか。
多くの中小企業の経営者がイメージするのは④の事業承継かと思います。
できれば我が子に会社を継いでもらいたい。
しかし、「後継者問題」という言葉を一度は聞いたことがあるかと思いますが、子供は別の会社で働き安定した生活をしているので、わざわざ色んな責任を背負わなければならない経営者にはなりたがらなかったりして、後継者がいないというケースは非常に多いです。
結果として経営者が高齢になったり病気になったりして、もう会社の経営をするのが難しくなり、①の廃業を選ぶという話をよく聞きます。
私はこのブログで何度も「戦略マーケティングをきちんと学ばないで起業して、売上があがらずに廃業してしまうケースが多い」と言っていますが、それとは別にきちんと売上があがっていても、そのようにして廃業を選んでしまうケースも多いのです。
これは非常にもったいない話です。
社会から必要とされているにも関わらず廃業してしまうとその会社の商品やサービスを利用している人は困ってしまいます。
また、何と言っても社員にとっては働く場が無くなってしまうわけですから死活問題です。
そこで検討されるのが⑤M&A、つまり会社の売却です。
一時期「敵対的買収」などと言ったキーワードをよく聞きましたので、あまり良いイメージを持っていない人もいるかもしれませんが、本来は「こういう事情で事業継続が難しくて買い取って欲しいんだけど誰かいませんか?」「だったら、うちの会社にとって非常にメリットになるから買わせていただきますよ」と友好的に話が進むものです。
そんなわけでM&Aを仲介する会社が結構増えているのですが、誰もが知っているような大手仲介会社は基本的には扱う案件は大きなもの、つまり取引価格で何千万とか何億というものになります。
そして当然に仲介手数料もそれなりのものになります(ただこれはぼったくっているわけではなく、それなりの手間暇がかかるからです)。
となると、我々税理士が顧問契約しているような中小零細企業で、そこまでの取引規模になる会社はそうそうないわけですから、「出口戦略としてM&Aがありますよ」といっても現実的ではなくなってしまいます。
しかし事業承継対策は待ったなしです。
現在全国の経営者の平均年齢は60歳を超えています。
事ここに及んで後継者候補がいないのであれば、事業承継という選択肢を残しておくのも現実的ではありません。
そこで3年前の平成26年に全国の税理士事務所が中心となって、そのような中小零細企業の出口戦略を支援するための「器」として一般財団法人日本M&A推進財団が設立されました。
前述したような大手の仲介会社では取り扱ってくれないような中小零細企業を救うという理念を持った財団で、私もその理念に共感して、会員となっています。
実際に具体的案件として取引価格500万円以下という非常に小規模で大手仲介会社では決して取り扱わないような事例も挙がっています。
この案件では当初経営者は廃業を考えていましたが、売却できたことによって社員の雇用を守ることができました。
このような話はおそらく世の中に沢山あるのだと思いますが、残念なことにその多くが廃業を選んでいるかと思われます。
そして、我々税理士側も「後継者がいないし、M&Aって規模じゃないから仕方が無いですね」と諦めてしまっているかと思われます。
それをこの財団のネットワークによって救うことができる可能性があるのです。
もちろん100%ではないと思いますが、しかし可能性があるのであれば、そこに賭けてみませんか?