前回『経営者は「数字が苦手」と言ってはいけない』というタイトルの投稿をしましたが、もしかすると「いや、どんなに試算表を読めるようになってもそれは過去の数字だから、役に立たないだろう」と思う方もいるかもしれません。

そんな方に是非お読みいただきたいのが今年の春発売されて話題となった『「数字」が読めると本当に儲かるんですか?』という本です。

本書はECサイトで花を販売するビジネスをしている著者が、最初は数字のことが全く分からずに売っても売ってもお金に困る、このままでは黒字倒産してしまう!という瀬戸際から、凄腕の税理士に管理会計を学び、数字を経営に活かすようになって資金繰りを安定させていくようになっていく実話が書かれたものとなります。

年商1億円を超え、憧れのレクサスを買うこともできた。

でも資金繰りは火の車で、銀行融資だけでは足りず、支払いを待ってもらったり、消費者金融からお金を借りなければならず、「なんで、売上があがってもこんな状態なんだ!普通売上が上がればお金に困らなくなるんじゃないのか!?」と全く納得がいきません。

でも、これは前回の投稿で言うところの「コックピットの計器を売上以外は全く無視して勘で飛行機を操縦している」状態です。

 

そんな状態のときに出会った凄腕の税理士は管理会計という概念を教えてくれます。

管理会計は「経営者に対して経営上の意思決定や業績管理に役立つ情報を提供することを目的とした会計」と定義されます(出典:デジタル大辞泉)。

中には無茶苦茶難しい指標もあるのですが、本書ではシンプルに「限界利益」と「損益分岐点売上」に焦点を当てて最初「数字は苦手!」と言っていた著者が戦略的に商品の値段設定などをできるようになり、安定経営を手に入れる過程が描かれています。

 

「限界利益」も「損益分岐点売上」も算数の世界です。

一度きちんと概念を理解できれば、経営に活かすことができますし、実際に「数字を読めることで儲かるようになる」こともできます。

しかし、この指標を全く知らずに、著者のように「売れば売るほどお金に困る」という状態になっている経営者は世の中に沢山いるのではないかと思います。

 

とは言え税理士の中にもこのような指標を理解していない人もいるようです。

実際本書では凄腕の税理士に出会う前にも顧問税理士がいましたが、「どうすればもっとお金が残るか?」を相談した際には「送料が結構かかっているのでここを削ればいいのではないでしょうか」とか「売上をあげることですね」といったようなトンチンカンなアドバイスしかしていません。

 

確かに税理士試験の勉強の中に管理会計というものはありません。

しかし、我々税理士は単に税務署に提出するための決算書を作成し、税金の計算をするだけの存在ではありません。

そこで扱った数字を経営に役立つように加工するのも腕の見せどころと言えます。

 

というわけで本書は非常に読みやすいですし、実話なだけに説得力もありますので、「数字は苦手!」と思っている経営者は是非ともお読みください。

そして我々税理士の活用方法を学び、実際に活用してください。