たまに勉強会や交流会などで名刺交換をした際に、私が税理士だと分かると「いや~、うちの税理士は全然アドバイスとか提案をしてくれないんだよね~」とおっしゃられる経営者がいます。

 

【税理士が全然アドバイスや提案をしてくれない】

これは税理士に対する不満の上位にあがってくる定番中の定番と言えます。

 

その原因の一つが以前にもご紹介した「低い顧問料」です。

例えば「顧問料月額1万円、決算料込み」みたいな契約で税理士にアドバイスや提案まで期待してはいけません。

打ち合わせをしたり決算申告をしたりするだけでも普通は赤字、という料金設定なのに、さらにそれ以上のものを要求するのは酷というものです。

もちろんその料金で顧問契約を締結した税理士側にも責任がありますが、アドバイスや提案を求めるのであれば「顧問料値上げしてもいいから、その分もっとアドバイスとか提案をして欲しい」という交渉をする必要があるのではないかと思います。

 

では、顧問料は別にそこまで低いわけではなく、アドバイスや提案といったサービスの提供も見込んだ料金設定になっているにも関わらずアドバイスや提案が全然無い場合にはどうすればいいのでしょうか?

 

ここで突然話が変わりますが、今年の3月にあのジャパネットタカタの創業者である髙田明さんのお話を聞く機会がありました。

さらにその後の懇親会でちょっとの時間でしたが、髙田さんと直接お話しすることができました。

 

実は以前『カンブリア宮殿』に髙田さんのご長男で現社長である旭人さんが出演された際に、髙田さんが「経営者はどんなに周りに素晴らしい仲間がいても自分が最終決断者として決断をし、その責任を取らなければならない。だから社長は孤独だ」というようなお話をされていたのを観ていました。

 

そこで、そのことをお伝えした上で、「自分は税理士として、そんな孤独な経営者に貢献したいと思っているのですが、その際に大事なことは何だと思いますか?」という質問をさせていただきました。

 

それに対する髙田さんの答えは・・・

「まずは相手が何を求めているのかを理解することではないでしょうか」というものでした。

 

ということで話を戻しますと、税理士がアドバイスや提案をしない理由として「経営者が何を求めているのかを知らないから」というものが考えられます。

経営者はどうなりたいと思っているのか、会社をどうしたいと思っているのか、社員に対してどうなってほしいと思っているのか。

そういった経営者が求めているものを知らなければ、そのために意味があると思われるアドバイスや提案のしようがありません。

 

税理士に求められる提案の代表は節税対策ですが、これにしても単純に「税金を減らしたい」という漠然としたものではなく、将来の退職金準備のための繰り延べをしたいのか、家族に所得を分散したいのか(もちろん給与としてなら勤務実態がある必要がありますが)など「その結果どうしたいのか」という具体的な話がなければ、提案しようにもできません。

 

なので、キャッチボールに例えると最初にボールを投げるのは経営者となるのです。

「自分はこういうことを考えているんだけど、それを達成するためにいいアドバイスが欲しい」というボールを投げて初めて、それをキャッチした税理士が「分かりました。それであればこういうのはどうですか?」とボールを投げ返すことが可能となるのです。

 

※もちろん税理士のスキルによっては返ってくるボールが大暴投(見当違いのアドバイス)になる可能性はあります。

 

なので、自分でまずボールを投げないで「税理士から何のアドバイスも提案も無い」と不満を言っている方がいらっしゃれば、まずは税理士にボールを投げてみましょう。

話はそこからです。

 

また、我々税理士の側にも、全然ボールを投げてこない経営者に対して「お~い、ボール投げてくれないと、提案しようがないよ」とアピールする気遣いも必要です。

 

なにせ経営者は税理士からのアドバイスや提案を求めているのですから。

 

そんなことを髙田さんには改めて気付かせていただきました。

 

なお、髙田さんの著書『伝えることから始めよう』は非常に素晴らしい内容でした。おススメです。