前回「なぜマーケティング支援に力を入れるのか?」というタイトルで、いかに起業しても何年ももたずに廃業してしまう人が多いのか、その理由は何なのか、そしてそうならないようにまずはしっかりと売上があがるように支援をしていきたいのだ、ということを書きました。

 

今回はもっと自分の体験を通じて、どうしてそう思うようになったのかを書きたいと思います。

 

約5年前、税理士として独立開業した私はクライアントほぼ0件からのスタートでした。

そして独立直後にご紹介いただいたのがサラリーマンを辞めて独立起業するAさんです。

Aさんは食品の製造販売業を始められたのですが、それまで全く営業や販売の経験がありませんでしたので、なかなか商品が売れずに大苦戦していました。

顧問契約を結び毎月打ち合わせをするのですが、売上があがらないため試算表の数字も厳しいものでした。

どうにか売上があがるためのいいアイデアはないものかと一緒になって考えるのですが、当時はまだ私自身全然マーケティングのことについて体系的に学んでいませんでしたし、相談できるようなマーケティングのプロも身近にいませんでしたので、そんなに効果的なアイデアを出せるということもありませんでした。

 

どんどん減っていく預金残高。

打ち合わせはAさんのご自宅で行うのですが、だんだん重苦しい雰囲気に。

Aさんには小さいお子さんがいらっしゃったのですが、いつも家の中を元気に走り回っていました。

「この子たちのためにも何とかAさんに成功してもらいたい!」

そう思いながらも状況が好転するきざしも見えませんでした。

 

税理士としての最低限の仕事として帳簿内容の精査というものがありますが、このようなシチュエーションでは「経費になるのかならないのか?」とか「勘定科目が正しく処理されているのか?」というのは重要ではないとは言いませんが、しかし、正直言って大勢に影響ありません。

どんなに税務的・会計的に適正に処理をしたところで、売上があがらなければ会社は継続していきません。

適正に会計処理をすることよりも売上をあげることの方が圧倒的に優先順位が高いのです。

 

そしてAさんが独立して約10ヶ月経った頃に、ついにAさんは会社を畳むことを決断されます。

「宮治さんには色々とサポートしていただいて本当に感謝しています。またサラリーマンに戻ってちゃんと家族を養っていきますので心配しないでください。」

 

そうしてAさんは会社を畳みサラリーマンに戻られました。

 

Aさんは営業や販売の経験は全くありませんでしたが、「こういうことで困っている・悩んでいる人の助けとなるためにこの商品を届けたい!」という熱い想いをお持ちでした。

私もその想いに共感し、その実現のお手伝いをしたいと思ってサポートをさせていただいたのですが、全くお役に立てませんでした。

本当に悔しく思いました。

 

ビジネスを行う上で理念やビジョン、熱い想いというものは非常に大事だと思います。

しかしそれに共感してくれて商品を買ってくれてファンになってもらうという一連の流れを作るためにはやはりマーケティングのことを体系的に学ぶ必要がある、ということを痛感しました。

 

ただある程度の規模の企業ならともかく中小零細企業にとっていきなりコンサルタントにお願いするというのはハードルが高いことでしょう。

しかし、どんなに規模の小さい企業でもほとんどの場合、顧問税理士がいます。

であるならば、税理士がマーケティングの部分でも支援できるというのは経営者にとってとても心強いことではないでしょうか?

 

私はAさんの件を通して、単に税金面のサポートだけでなく、マーケティング支援をすることでクライアントの売上アップに貢献できる税理士になりたいと強く思いました。

 

夢や希望を持って、熱い想いを持って起業したお客様が会社を畳む姿は見たくありません。

お客様の勝ち(これは競合他社に勝つという意味ではありません)に貢献したいのです。

 

今ではその私の想いに共感してくださった一番化戦略コンサルタント・髙田稔先生のお力を借りてマーケティング支援を行っているのですが、その原点はあの日の悔しさなのです。