税理士に対する不満の代表例に「専門用語連発で何を言っているのかチンプンカンプンで、分からないと言うとそんなことも分からないのかと怒られる」というものがあります。

以前お話しした財務・会計にしても税法にしても日常生活では見かけない専門用語がオンパレードです。

減価償却費、貸倒引当金、減損会計、租税特別措置法などなど。

 

経営者も最低限、財務・会計や税法のことを学んでください、とお伝えしましたが、いざ勉強をするとこのような専門用語が沢山出てきます。

そこで税理士に「これってどういう意味ですか?」と聞いて

「減価償却費は減価償却費だよ、そんなことも分からないのか!」と怒られたら、もうその時点で勉強する気が失せるというものです。

私だったらアホらしくなって勉強しなくなるでしょう。

 

怒るというのは極端な話ですが、このような専門的な難しい話をそのまま難しく説明する税理士は残念ながら結構存在します。

私は「難しいことを分かりやすく説明してくれる人」こそが真の専門家であり、「難しいことを難しく説明する人」は言い方は何ですがエセ専門家だと思っています。

 

私自身、いかに分かりやすく説明するかということは常に意識しています。

その原点が大学生時代の塾講師のアルバイト経験です。

学生時代、大手学習塾で小学生や中学生に国語と英語を教えていました。

もちろんアルバイトとは言え、実際に生徒相手に授業をするわけですから、いきなり授業を持つのではなく、正社員の先生の前で模擬授業を行い、フィードバックをもらい、ある程度の基準を満たしたと判断された段階でようやくデビューできるという流れです。

 

その模擬授業の際のフィードバックで非常に印象的だったのが

「宮治君、君は大学受験に合格しているから勉強ができる優秀な人なんだよ。

でも、授業に来る生徒は必ずしも勉強ができる子ばかりじゃなく、全然勉強ができない子も多い。

君の授業は勉強ができる子には理解できるかもしれないけど、全然勉強ができない子には多分理解できないだろう。

勉強ができる人間としての当たり前の感覚ではなく、この表現で勉強ができない子にも分かってもらえるだろうか?という視点で組み立てや伝え方を考えてごらん」

というものです。

 

実際には私自身、一浪した挙句志望校に合格できなかった身なので、決して勉強ができる子ではなかったのですが、ただ、この時の言葉というのは今も大事にしているところです。

お客様に対して「学んでください」と言う以上は、正しく理解していただくためにそれを分かりやすくかみ砕いて説明するというのは私の責務だと考えています。

何よりも難しい話をかみ砕いて説明してお客様が「なるほど!分かった!」という状態になるのが何よりの喜びなのですが、これも塾講師をしていた名残りなのかもしれませんね。